16話 ページ16
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「Aは、ッ…いつでも、ともだちおもいなんですっ…! あまり、それでからかってやらないでください!」
「よもや、俺がからかっていると? ははっ、冗談はやめてくれ」
その言葉に、炭治郎は言葉を失った。
確かに、目の前の男が嘘をついている匂いはしない。
けれど、それはまるでーーーーー
自身の脳に浮かぶ嫌な予感に炭治郎は人知れず冷や汗をかいた。
「(まずい、まずいまずいっ! まさか、煉獄先生 "も" Aの事を気に入ったのか!?)」
嘘だと信じたいが、それ以上に己の鼻は信頼しているし、しかも男の彼女を見る視線がドロドロとしていて、心の底から嫉妬という感情が湧き出る。
何でそんな風にAを触るんだ。何でそんな視線で彼女を見るんだ。
やめてくれ。
Aは、その場所は、俺の、居場所なはずなのに。
刹那、炭治郎の周りを軸とし何処からか水を赤く染めた様な龍が現れた。
それは、煉獄に向かって放たれ……たのではなく、Aの元へ一直線に飛んだ。
「よもや、まさかその技を使ってくるなんてな」
挑発気味に放たれた言葉をもろともせず、炭治郎は腕の中で眠るAの頭を愛おしそうに撫でた。
「…煉獄先生。貴方がその気なら、俺は誰であろうとAを守ります」
静かな怒り、敵対心、嫉妬を混ぜ合わせた声色の炭治郎は、自身の耳飾りを揺らした。
明らかな宣戦布告に煉獄は驚きながらも炭治郎から目を離さない。自身もまた、その少女を狙っているからだ。
「彼女の初めての吸血は俺が貰った。吸血された人間は以前よりもより濃い匂いを漂わせる。吸血鬼にとっては一種のフェロモンだ」
「ええ、だから守るんです。狙ってくるであろう吸血鬼たちから」
「到底一人じゃ敵わん相手にもか?」
「俺の命が果てるまで、いや…たとえ果てたとしても彼女に指一本触れさせない」
そう言った炭治郎の瞳は色を無くし、Aの存在を確かめる様にぎゅっと抱きしめた。
煉獄はこれは相当愛に溺れているなと感じ、だが、己も炭治郎と同じ考えなのだからそれを否定する事は出来ない。
「それでは失礼します。煉獄先生」
「嗚呼、気をつけて」
にこり、と心優しい炭治郎は笑顔を作り、そのまま資料室から出て行った。
良くも悪くも友達の炭治郎は彼女の意識がある前では牙を出さない。だが、その仮面が外れた時はきっと、己を脅かす存在になると煉獄は信じて疑わなかった。
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アオ猫又(プロフ) - 獪岳が好きなんでこの作品がめっちゃ好きです!ありがとう、作者様…。 (2022年1月1日 21時) (レス) @page33 id: 6f2bf6bdd1 (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅(プロフ) - いつも楽しみにして見させてもらってます!失礼ですが、42話のしのぶさんの台詞の「あっ、そろそろ〇〇さんの番ですね。....」の番が版になっていました。詳しく書けたか分かりませんが、大丈夫でしたでしょうか?あと、更新頑張ってください!応援してます! (2020年11月22日 21時) (レス) id: 1ef7d533ea (このIDを非表示/違反報告)
るる - 予告とかの文才がありすぎてヤバいです(←文才力0の人) 更新頑張ってください! (2020年4月17日 12時) (レス) id: 9d2e256c74 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐の中の棒人間(プロフ) - みっくす14。さん» コメントありがとうございます。誤字指摘有り難いです......!おこがましいかもしれませんが詳しいページを教えてくださると助かります!(無能で申し訳ないです)。 (2020年1月4日 22時) (レス) id: 46f50694f0 (このIDを非表示/違反報告)
みっくす14。 - いつも見させてもらってます!!でもちょーっと直してもらいたいところがあるんですよね。沢山誤字っております。(..)出会いの方ですかね? (2020年1月4日 1時) (レス) id: ebaa9545e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆腐の中の棒人間 | 作成日時:2019年12月26日 22時