1話 ページ1
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「ヤァアアッ!」
茜色の空を見上げぼんやりと校内の廊下にあるベンチに座りながら、まるで戦闘映画の吹き替え版の声のような言葉を聞き流す。
所々パシッ、という声も聞こえるあたり剣道部員が練習に励んでいるのだろう。
あっ、冨岡先生の怒鳴り声も聞こえた。まじで声よく通るな先生。
無口でスパルタすぎる冨岡先生とは昼食を一緒に食べる仲だ。と言っても、まぁ毎日一緒に食べるわけではない。
いつも一人で食べている先生を不憫に思ってねぇ?これでも優しいAちゃんですから。
いや、まぁうん。ごめん、自分で言ってて気持ち悪くなった。
因みに、冨岡先生と何を話すのかというと、鮭大根について熱く語ったり、持ち前の運動神経を買ってか、私を剣道部に入らせようとしたり……意外と話は弾む。
運動は好きだけれど、そこまでガチって言うほどでもないし、家でごろごろするのが好きな私は未だに帰宅部だ。
そんな帰宅部がなぜ放課後に学校に残っているのかというと。
『おっそいなぁ、あいつ』
先生に呼び出された友人を待っているのだ。
テニス部の彼女だが、今日は偶々練習が休みの日で一緒に帰ろうと言ったのにこれだ。
まぁ数分なら、帰りにコンビニとか一緒に寄りたいし。と二つ言葉で頷いたがこれがなかなか戻ってこない。
「煉獄先生に放課後ちょっと手伝って欲しいって呼ばれちゃった〜!!!」
なんて惚けていたしな……まさかあいつ、煉獄先生との会話で興奮して私を忘れてたりとかしないよね…?
うわっありえる。ってか完全にそれじゃない???前から友人、煉獄先生のこと好きって言ってたし。
ーーーーー煉獄先生とは、この学校の社会科担当の教師であり、その人柄の良さと顔の良さで学園一と言っていい程の人望ぶりだ。
まぁ、たしかにあの人かっこいいと思うけど、偶に垣間見る獣のような顔つきが少し怖い。
それを友人に言ったら何言ってんの〜?と流されただけだが、それがどうにも私には引っかかるのだ。
『まぁ、腹いせに邪魔しにでも行きますかぁ』
もう既に30分は立っているのだ。楽しくおしゃべりしているであろう友人を連れ戻してもいいだろう。
そう思い、私は空になったジュースのペットボトルをゴミ箱に投げ込みベンチから立ち上がった。
ーーーーーこの時、大人しく帰っていればあんな事にはならなかったのに。
そんな事この時の私は、知る由もない。
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アオ猫又(プロフ) - 獪岳が好きなんでこの作品がめっちゃ好きです!ありがとう、作者様…。 (2022年1月1日 21時) (レス) @page33 id: 6f2bf6bdd1 (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅(プロフ) - いつも楽しみにして見させてもらってます!失礼ですが、42話のしのぶさんの台詞の「あっ、そろそろ〇〇さんの番ですね。....」の番が版になっていました。詳しく書けたか分かりませんが、大丈夫でしたでしょうか?あと、更新頑張ってください!応援してます! (2020年11月22日 21時) (レス) id: 1ef7d533ea (このIDを非表示/違反報告)
るる - 予告とかの文才がありすぎてヤバいです(←文才力0の人) 更新頑張ってください! (2020年4月17日 12時) (レス) id: 9d2e256c74 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐の中の棒人間(プロフ) - みっくす14。さん» コメントありがとうございます。誤字指摘有り難いです......!おこがましいかもしれませんが詳しいページを教えてくださると助かります!(無能で申し訳ないです)。 (2020年1月4日 22時) (レス) id: 46f50694f0 (このIDを非表示/違反報告)
みっくす14。 - いつも見させてもらってます!!でもちょーっと直してもらいたいところがあるんですよね。沢山誤字っております。(..)出会いの方ですかね? (2020年1月4日 1時) (レス) id: ebaa9545e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆腐の中の棒人間 | 作成日時:2019年12月26日 22時