じゅうごー ページ16
.
「A様は、わ、私のことが視えるんですね」
『まぁ、そんな禍々しいオーラ放ってたらね……』
あはは、と苦笑いしながら彼女を見る。
綺麗に束ねられた日本独特の髪の毛を持つ彼女は軽く二メートルを超えている。
「はぁ…A様が視える方だと知っていたらおめかししたのに…こんな見苦しい姿を晒してしまってすみません……」
『いーよいーよ、君、案外可愛いんだね』
「可愛いだなんてぇぇ私にはもったいなぁぁぁぁぁいい……」
『ごめんごめん、もう言わないから顔の影濃くするのやめてくれる？ 怖いから』
クワッと輪郭と影を濃くするのめちゃんこ怖かったんだけど。鳥肌さん久しぶりだね。
『え、と、きみはなんでそらるさんに取り憑いてるの？』
私がそう言うと、彼女はそう、ですねぇ、話すと長くなるんですが…と言った。
『あ、長くなるなら別に話さなくてもい』
「あれは私が霊になりたての頃でした」
『話遮りやがったこいつ』
あれは、そう。寒い寒い冬の季節。
(なんか始まった……？)
ちょっと黙っててください。
私は、霊になりたてということもあり何をすればいいのかわからなかったんです。
どこに行けばいいか、何をすればいいのか、そんなこと見当もつかずぶらぶらと漂っていると
ここら辺では珍しい雪が降降り始めたんです。
その雪を綺麗と思う反面、切なさも込み上げてきて、
複雑な感情を抱えた私はいっそこの怨念を他人に押し付けて呪い殺そう、と考えてしまいました。
(いや怖っ、幽霊こわっ！)
ちょっと黙っててください。
……そんな、醜い私の前に現れたのがご主人様でした。
ご主人様は、他の知人の方の世話をするのは得意なのに、自分のこととなるとどこか他人事で…言っちゃえば面倒くさがり屋だったんですね。
私が生きてた頃は家政婦をやっていたのもあり、そんなご主人様をほっとけませんでした。
ご主人様が出かけた頃を見計らって、洗濯、片付け、皿洗い、掃除など出来る限りのことをし終わった後にちょうどご主人様が帰ってきたんです。
綺麗になった床をつー、と指でなぞって一言『ありがとう』と、
ご主人様には何のこともないただの一言でも、怨念に飲み込まれそうになっていた私はたいへん救われました。
…まぁ、言っちゃえば私がご主人様の『ありがとう』という言葉を聞きたくて住み着いてるって訳ですかね……
『一言だけ言っていい？？まじでそらるさんメンタル最強じゃん』
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1406人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅茶 - 作者様…御生存なさっていますか…？更新頑張ってください！ (2022年12月1日 17時) (
レス) @page19 id: beb9593a66 (このIDを非表示/違反報告)
歌音 - 風邪には気をつけて下さい。更新頑張ってください!! (2019年12月8日 11時) (レス) id: 60755d8909 (このIDを非表示/違反報告)
あいろ - 夢主ちゃん性格悪い〜作者さん生きてますか？更新頑張ってください！ (2019年9月5日 20時) (レス) id: 7961ad3a74 (このIDを非表示/違反報告)
kl - おーい、作者生きてる？大丈夫？ (2019年3月25日 12時) (レス) id: 33cdc0490e (このIDを非表示/違反報告)
れあ(プロフ) - 続けてコメントごめんなさい！33の桶狭間の戦いと三蔵がなんかもうネコトモなんです！ (2019年1月24日 23時) (レス) id: 5be1506abf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：豆腐の中の棒人間
| 作成日時：2018年8月20日 14時
