『匂いつけても、いいですか？』【歌/い/手】

▼.憧れと尊敬と恩人 ページ46

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「ひぃ…どうしよう、柄にもなく足が震えてきた」

待ち合わせ場所で一人、そんなことを呟いた。この業界に入り慣れていたマスクも、何処か違和感があって、数秒おきに整えてしまう。

今日は、ねこさんとコラボの打ち合わせをする日だ。昨日の夜からずっと緊張していた僕は、寝不足だと言うのに目はしっかり冴えている。


ツイッターでねこさんには自分の服装や髪型の特徴を教えているから多分、分かると思うけど。迷ったりしてないかな。なんて考えていた時、ふと声をかけられた。


『あの、天月さん。ですか？』


高すぎず、低すぎず、透き通る様な声、その声に一拍遅れて返事をした。

僕の目の前にいるのは、小柄な、失礼かもしれないけれど、身長が小さい女の子だった。その子は、ねこけいうたいて、と自己紹介してくれた。


謎に包まれていたねこさんの謎が一つ解けた様な気がした。

自分のお気に入りのカフェに行く途中、緊張しすぎて何話したか忘れたけど失礼な事言ってないよね？多分、言ってないと信じたい。



そして、打ち合わせの時間。その時間で、僕の中のねこさん好感度はどんどん上がっていった。



一つ、彼女は凄く真面目な事が数時間で分かった。

まず、今の時代ケータイという便利なものがあるのに持参したメモ帳に打ち合わせ内容を書いていた所は凄く可愛かった。


そして、食べる時の顔が良い。

これだと僕が変な性癖でも持ってるのか疑う人も居そうなので弁解するが、決してこれは性癖でも何でもない。

ねこさんは、食べ物を本当においしそうに食べるのだ。見てるこっちが微笑む程、きらきらした目で。可愛すぎてどうにかなりそうだった。


そして、何よりねこさんは礼儀正しい、というより常識がしっかりしてる。というのか、まぁそんな感じだ。


歌い手は、基本フリーで気ままにやってる人が多いから初対面の人でもタメ口で、っていう人もいる。

けれど、ねこさんはそんな事はなく礼儀をしっかり弁えていて、どこか僕に気を遣っている様にも見えた。

そういう所は、凄く尊敬できる所だな、と素直に思った。




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