『匂いつけても、いいですか？』【歌/い/手】

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最後まで、僕のストーカーをその鋭い目つきで睨んでいたねこさんだったが、女性が消えた瞬間顔付きが変わった。


もちろん、良い方にね？


そして、かっこ悪く腰を抜かしている僕にも優しく手を差し伸べてくれて立たせてくれた。

あっ、今のへらって笑うところめちゃくちゃ可愛かったもう一回見たい(下心満載)


まて天月。そうじゃない、と自分を落ち着かせてから疑問をぶつけた。
そう、何であんな技を使えたのかだ。

何か護身用にでも習っていたのだろうか、と思ったが、返ってきた答えは僕の想像の斜め上で、「テレビの見様見真似」だそうだ。


いやいやいや、テレビの見様見真似であんな完璧に、さらっと出来ちゃうもんなんですか。
そうも思ったがこれ以上深入りも良くないな、と考えそれ以上は聞かないでおいた。

ついでに、教えようか。と聞こえたので全力否定した。実践してみようとか言われてその技やられたら僕死ぬ自信ある。



先程までカッターを持った女性に迫られていた僕を元気づけようとしたのか、冗談も交えながら心配をしてくれた。


それに苦笑いで返すと、ねこさんは素早くその場を離れようとしたので、その小柄な体を逃がさないとばかりに手を掴んだ。


さっきまで、僕は自分のことで手一杯で一番大事な事を言うの忘れていた。


ありがとう、と。

こんな状態に陥って、助けてくれた人にお礼を言わない人は中々いないだろう。少しこっ恥ずかしい気もするが言葉は伝えないと分からない。


意を決したようにお礼をすると、ねこさんは


『……ん、どーいたしまして。じゃ、また明日ね』


と言って笑った。

夕日をバックに、見たことも無い笑顔で笑うねこさんは、その小柄な体型から淡くもあり、どこか頼りになる表情だった。


あまりにも、その絵になる姿に胸がどくん、と熱くなる。


い、いやいや、違う、これは別に恋なんかじゃない。急にタメ口になったから胸がときめいただけ。

…どちらにせよ、ときめいたんだろう。僕。



第一印象は真面目な女の子。
その次は、その態度や僕の話を聞く姿勢から尊敬の気持ちも芽生えた。


そして最後は僕の恩人。


真面目で尊敬できる僕の大好きな恩人。色々と、僕の気持ちを掻っ攫うのが上手な人だ、あの人は。

とんだ人と関係を持ってしまったなぁ、僕も。まぁ、後悔はしてないんだけどね？




「明日が、楽しみだ」


気ままな猫が家に来るのを楽しみに、家へと帰っていった。




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