月見酒 ページ8
「Aが酒を飲むとは珍しいな。」
風呂上がりの維は話しかけ、彼女の隣へ腰かける。
「今日は月も綺麗だし、たまにはいいじゃない？どう？維も飲む？」
「じゃあ、もらおうか。」
暫くの沈黙の後、Aは話しかける。
「なんで個性婚のこと、話したのか疑問なんでしょ？」
「ああ、お前は私と豊満先輩以外に話したことはなかっただろう？」
「そう、だね・・・・。でもね維。
経験者からは凄く辛いんだよ。同じ境遇だからこそさ。
維が神野事件で意識不明の重体になったとき、状況判断もままならないほど信じられなかったの。
だからもう、同じ過ちをほかの人にしてほしくないの・・・・。」
「心配ないさ。Aには味方がたくさんいるだろう？
あの子の周りにも仲間はいる。絆で結ばれた仲間がいる。」
「でも・・・・。」
「Aは物事を背負いすぎたよ。もう少し自分を優先した方がいい。」
「変わらないね、維は。」
Aの頭の上に手を置き維は月を見上げた。
「いや、変わってしまったよ。私達も、あいつも。」
「そっか、そうだよね。」
Aは維の体に身を預けて目を閉じて眠った。
暫くして、そろそろ寝室に向かおうかと維がAを抱き上げると隣の部屋から
「義兄さん。杯と徳利は片づけとくからもう休んで。」
「すまないな。」
「なぁ、義兄さん。」
「なんだ？」
建図は躊躇い、そして再び顔を上げ維に問う。
「もしかして姉さんは、師匠のこと轟くんと面影を重ねてしまったのかな。
似てて仕方ないよね。師匠ってエンデヴァーの亡きお兄さんの息子だったもんね。」
「建図、少し話をしよう。Aを寝室へ寝かせてくるからちょっと待っておいてくれ。」
「わかった。」
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作者名：麻倉詩悠 | 作成日時：2018年7月29日 11時
