検索窓
今日:3 hit、昨日:11 hit、合計:358,923 hit

74 ページ25

ポットを抱えて病室に戻った。

安室さんは上半身だけ起こしてコナンくんと話していた。

その後コナンくんはちょっと行ってくると言って足早に病室を出た。

きっと気を使ってくれたんだと、コナンくんの後姿に心でお礼をいった。




「安室さん、よかったです。目が覚めて。」

「。。。。」



あの蒼い瞳と目がぶつかった。

相変わらず何を考えているのかやからなくて動揺しそうになった。




「時音さん。」

「は、はい。。。」



ちょっと怖かった。

いろいろ聞かれるかと思ったからだ。

何故あの場にいたのか。

何故組織の件を知っているのか。

観覧車の中で言われた言葉が私の頭の中でループする。




『君は何者だ。』





言えるわけがない。

ずっと知っていることを黙っていたんだ。

もしかしたら否定されるかもしれない、軽蔑されるかもしれない。

もう二度と戻れないかもしれない。


私は彼の顔を見ていられなくなって下を向いた。

すると、彼はゆっくり言葉を紡いだ。





「時音さん。俺は何も聞かない。だから、こちらに来てくれないか。」




この口調は降谷さんの方だ。

びっくりして顔を上げると、彼は優しげな笑を浮かべでこっちを見ていた。

私がゆっくりベッドに近寄ると腕を引っ張られて腕の中に引きずり込まれた。

驚いて動けずにいる私には彼はそのまま話し出した。





「やっと触れられる。。。」

「っ。。。」





その言葉に何も言えなかった。

耳元で聞こえる声はどこか震えていて、弱々しい。

でも、声を聞くだけでこんなにも心が落ち着くのは、そうとうこの人を想っているのだと実感させられる。





「水族館行こうか。。時音さんが行きたいところ全部連れてってやる。」





そう言って頭を撫でてくれる。

その手つきがあまりにも優しく、そっと目を瞑った。

首元に顔を埋めるとちゃんと彼の匂いがした。

それがどうにも心地よく、ずっとこのままでいたいと思ってしまう。





「ありがとう。。助けてくれて。ありがとう。。。。そばにいてくれて。」






ああ、もう本当にダメだ。

私はこの人がいないと多分ダメになる。

この優しさも、国への正義感も全て私には輝いて見える。





「私、何も言わなかった。。。知ってること黙ってた。全部知ってたのに。。。っ。。嘘を、ついた。。」






我慢していた涙は彼の入院着をいとも容易く濡らしてしまう。

彼は傷に響かない程度、腕に力を入れて抱きしめてくれた。

75→←73



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (501 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1709人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

やっち(プロフ) - こんにちは。いいお話です。続きが読みたいです (2022年7月2日 5時) (レス) @page29 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
- とても優しい物語ですね。続きを楽しみにしています。 (2021年12月13日 1時) (レス) @page29 id: 1125244af9 (このIDを非表示/違反報告)
Lapislazuli. Charlot.(プロフ) - 素敵なお話ですね。是非とも続きがみたいです。もう更新はなさらないのですか?それなら残念です…とても面白かったです! (2021年6月19日 1時) (レス) id: b8ccefd154 (このIDを非表示/違反報告)
霞葉ノ雫 - このお話がとても、とても。大好きです。胸が一杯になって、溢れて止まらない。続き、待ってます。 (2020年6月26日 6時) (レス) id: a64398df50 (このIDを非表示/違反報告)
まい(プロフ) - とても面白かったです。感動しました。続き楽しみにしてます(^_^) (2019年5月30日 2時) (レス) id: a6e5e5f5e4 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:こゆん | 作成日時:2018年5月23日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。