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夜なのか朝なのかわからない時間に二人で泣きながら笑った日から3日。
昨日からようやく仕事に戻り、仲間たちとも以前のように笑い合えるようになってきて、俺を見ると心配そうに眉を下げていた横尾さんも、優しく笑ってくれる。
嬉しかった。俺も横尾さんも前に進めてるんだって思えたから。
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「みつ〜あとはみんなに任せて休憩行こう」
「あー、これだけやったら行くから先行ってて!」
了解って笑った横尾さんを見て、また仕事に戻る。食器を食洗機にかけているとドアの開く音がして、急いで入口に向かうと、目に入ってきた光景に俺は動けなくなる。
「…っは、……?」
よこ、さん…俺久々に仕事しておかしくなっちゃったのかな、
思い、戸惑う俺に近付いてくる、信じられないもの。
「ごめんちょっとお茶もら…」
スタッフルームから戻ってきた横尾さんも同じように固まっている。よこーさん、これ、どういうこと
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蘇る…記憶。
困ったように眉を下げて、ふにゃっと笑う顔。胸元のネックレスや、首元を触る癖。気に入って使っていた香水の香り。クセを感じさせないように綺麗にセットされた髪の毛。
抱きしめていたはずの腕からすり抜けていっていた記憶の数々が、足元から駆け上がってくるのがわかる。
その感覚と、目の前に広がる夢なのか幻なのか現実なのかよく分からない光景に、全身の震えが止まらない。視界もかすんで…もう何が何だかわからない。
「久しぶり…ひろ。渉も」
俺を呼ぶ声がする。ずっと、待っていた…声。低くて、相変わらず色気のある、俺の大好きな声だ。
「おぼえ…てる?」
ったりめーだろ…困ったように笑う顔、今も変わらないんだな、泣きそうに眉間にシワを寄せるその表情も。
でも、まって、たのむ…から、いまは泣かないで、
「…っ、たいすけ…」
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茉莉花(プロフ) - nicole155さん» 初めまして。実は中盤からちゃんと描けているか不安になっていた部分もあるので、素敵な感想を頂けてとても嬉しいです。ありがとうございます! (2018年8月14日 1時) (レス) id: 1e53697028 (このIDを非表示/違反報告)
nicole155(プロフ) - はじめまして。お話、とてもおもしろかったです。いい意味で、お話の展開がわからなさ過ぎて、とてもハラハラしました。蜃気楼がテーマだったと知って、あらためて蜃気楼リピートしてます。素敵なお話をありがとうございます。 (2018年8月8日 8時) (レス) id: 5edbe27f7b (このIDを非表示/違反報告)
茉莉花(プロフ) - なみこさん» はじめまして、コメントありがとうございます!こちらこそお読み頂きありがとうございます!え〜…嬉しいです^^笑 これからも頑張りますのでよろしくお願い致します! (2018年8月6日 14時) (レス) id: 1e53697028 (このIDを非表示/違反報告)
茉莉花(プロフ) - 白雪さん» ファンだなんて…!泣 こちらこそありがとうございます!本当に嬉しいです…これからも頑張りますのでよろしくお願い致します! (2018年8月6日 14時) (レス) id: 1e53697028 (このIDを非表示/違反報告)
なみこ(プロフ) - はじめまして!更新ありがとうございます!本当に個人的に大好きなお話なので更新されるたびに声が出てしまいます笑 これからも楽しみにしております! (2018年7月23日 15時) (レス) id: 3a6b1b4e2c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茉莉花 | 作成日時:2018年7月5日 18時