南無 ページ16
それは晴れたある日のこと。
スキャ「ヴェ、ヴェールさん！」
いつものように口上中に歌い出すヴェールとそれを止めようとするスキャター。
スキャ「ヴェールさん！ヴェールさ〜ん！」
ようやくスキャターの声が耳に届いたのか、ヴェールの歌声がピタリと止む。
それと同じころ、ヴェール達の後ろでわらわらと集まるメンバー。
ジョー「…大丈夫か、お前。なんか透けてねぇ？」
ジョーの視線の先には柱に項垂れたサムの姿。
いつも飄々としているはずのサムが、ない顔色をより悪くして気怠そうにしている。
サム「だ、大丈夫。成仏しそうなだけだから…」
ジョー「それ大丈夫じゃねぇだろ」
いつもは透けていても分かりにくいのだが、晴れた外では透けるよくわかる。
『お。サム、今日は透明度抜群だね』
サム「女子の憧れの的よ」
ジョー「透明度の意味が違ェんだよ」
物理的に透けてどうする…とブツブツ言うジョーの後ろからジャックが、ひょこっと顔を覗かせる。
ジャク「サム〜、なんか顔のラメ減ってない？？」
サム「元気なくなると顔のラメ減るんだよ…」
ジョー「そんな仕組みだったのかよ」
意外な事実に片眉を上げるジョー。ジャックは興味津々にサムに突っかかる。
珍しいメンバーのジャレつきに、客は一斉にカメラを向ける。また、サムの正気の無さに皆ざわつきだす。
ファジ「ヴェールちゃん。アンタが喋ってる間にまたなんかやってんで」
ヴェル「ちょっと、Aさんまで！まだ私の出番ですのよ！酷いですわ！」
ぷんぷんとお怒りのヴェールをAは慰める。
『ごめんね、ヴェール？サムがヴェールの歌に感激してたから、ちょっとお話ししちゃった…』
まるで子供を説得するような口ぶりにファージャは後ろで呆れた顔をしている。
ヴェル「まあ！そうなんですの？では、後で特別にサムさんに歌って差し上げますわ！」
ファジ「息するみたいに裏切るやん」
先ほどとは打って変わってキラキラとした笑顔を見せるヴェール。それにつられてAも負けず劣らずのキラキラとした笑みを見せる。
サム「俺、命日になっちゃうなぁ」
ジャク「元からﾀﾋんでんじゃん」
サム「あっ、そっか〜！」
あはは！と二人分の愉快な笑い声が響く。ジョーとファージャはその様子に怪訝そうな顔をする。
ジョー「ヤベェぞ、アイツら」
ファジ「元からやん」
『ねー』
ファジ「アンタ、人のこと言えへんからな？」
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作者名：いす | 作成日時：2021年3月3日 4時
