5話 ページ6
KAITO「司くん。プロポーズのシーンなんだけど、もう一度一緒にやってみないかい?この劇の重要なシーンだから、本番前に、ここだけ確認したほうがいいと思うんだ」
司「たしかにそうだな。念には念を入れてこそ、スターだからな!」
類「じゃあ、僕は相手役をやろうかな」
KAITO「膝をついて、右手に持った剣は後ろに。左手をうやうやしく差し出して...うん、いいね。そのままセリフを言ってみて」
司「あぁジュリエット!僕の太陽!どうか、この僕と結婚してほしい!」
類「ロミオ...それならば、その名を捨てて、私をとって頂戴」
司「ジュリエット...!」
KAITO「すごく良くなったね!これで本番もバッチリだと思うよ」
司「あぁ、助かったぞ、カイト、類!必ず学校中を...いや、世界中を感動の渦に叩きこんでみせる!」
寧々「それは無理でしょ...」
司「ぬっ...!なにを根拠に...!」
寧々「ロミオとジュリエットのパロディって聞いて台本読んでみたら、バカみたいに戦うシーンばっかりだし、話の展開も変だし...これでどう感動すればいいわけ?」
司「全く、何もわかっとらんな!9人のロミオによる、命と真実の愛を賭けたバトルシーンはどう考えても感動するだろう!」
A『いつもの声がしたと思ってきてみたら...』
私は空き教室のドアを開けた。瑞希が後ろから覗いている。
寧々「あ、Aやっと会えた...」
A『なんか私はぶかれてるみたいじゃない...?』
寧々「声をかけに行ったらもう教室にいなかったんだよね。そのあと類が違う人といるの聞いたって言うから、あとで誘おうと思ってたんだ」
類「あぁ、白石くんが丁寧に教えてくれてね」
草薙さんや神代くんの言葉に私はあぁ。と声をもらした。
A『白石さんに会ったんだね。ところで、台本すっちゃかめっちゃかだけど、大丈夫なの、これ?』
私は天馬くんを見ながら台本をひらひらして見せた。
寧々「真実の愛を賭けたバトルシーン。ね...」
類「あの場面は僕も好きだよ。愛するジュリエットのために、ひとり、またひとりと無残に散り逝くロミオ達...飛び散る血潮。悲痛な慟哭。だというのに、見ている者は何故か笑いを堪えきれない...」
A『笑いを堪えきれない理由は明確でしょうが...』
類「愛する者を奪いあうという悲劇を、あそこまでの喜劇に仕立てあげた手腕は素晴らしいものだと思うよ」
神代くんはニッコリと微笑んだ。それに対して天馬くんはきょとんと首を傾げていた。
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作者名:ゆう | 作成日時:2022年1月13日 18時