# Tale of the petit love : eight (ページ2)

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「今日は天気悪いな」

校門をくぐった先で空を見上げて呟く

いつもなら帰り道には隣にAがおるけど

今日は俺一人

別に寂しくはない

あいつは寂しがり屋やから

昔から俺の後ろにちょこちょこついて来てたな

最近Aは自分から

ヤスについてあんまり話さんようになった

前に、前髪を褒めてもらったって話をきいた以来

Aの口から「やすくん」の名前は出てこない

「あ、雨」

下を向いて歩いてたせいか

ぽつりと地面に落ちた雨粒を見て気付く

それと同時に、傘を持ったAが

小走りで追いかけてきて叫ぶ

「きみくん！風邪ひくやん！」

俺より背の低いAが俺に傘を差し出して

ちょっと肩濡れてるけど

「ありがとう、帰ろか」

「うん、きいて、きみくん。
今日な、やすくんに
駅前のドーナツ屋さん、美味しいねんで～
って教えてもらった」

「そっか、よかったな」

ついこの間まで挨拶しただけで喜んだり

ちょっとした会話でもキャッキャ言うとったのに

進歩したやん、それやのに、なんで

「泣いてるん？」

「 …やすくん、もうすぐ引っ越すねんて」

うん、知ってた、なんか言えるはずもなくて

俺は黙ることしかできひんかった

「もうびっくりした～。
お父さんの会社の都合やねんて。
寂しくなるけど、向こうでもがんばってほしいな」

「わたしも、もっといい人見つけるわ」

そう言ってAは前を向いた

どこか吹っ切れたような表情やった

俺の知ってるAなら

ここでめそめそ泣きじゃくってたはず

小学校のとき家族と喧嘩したときも

中学で仲良かったゆりちゃんに裏切られたときも

そうやって、俺を頼ってきたやんか

もうAは、あの頃のAじゃない

何も変わってへんのは俺のほうやったんや

いつまでも、俺ばっかりAのこと想ってた

ずっと一緒におりたいと

ずっと守っていきたいと

いつか振り向いてくれたらいいと

そう思ってたのに

言葉にできひん臆病な自分がおった

「がんばれよ」

今更 Aへの気持ちが

こんなにも大きいものやったと気付く

それでもきっと

Aが俺に振り向く日は来ない

傘の中で濡れた頬は、今も降り続く雨のせいにした。

- fin -

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