難攻不落の向井くん

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黒Side


康二と出会ってから早数ヶ月。

綺麗な桜も散り、いよいよ本格的に夏を迎えた。


「よし、シズカちゃんとこ行こうぜ〜」

「あ、俺パス！」

「また康二んとこ？」

「ん。二人で行って！じゃあな」


休み時間になるとシズカちゃんの所に行くのが
俺らの日課になっているのだけれど、
ふっかさんは一回も来たことがない。

前は落としたい女の子がいたら我先にと
飛び込んで行ってたのに、何かつまんない。


「つまんね。」

「ね。」

「お、行く？」

「ん。」


一緒にシズカちゃんを狙うなんて言ってたくせに
一人だけ離脱なんてずるい。

だから少しくらい邪魔したって良いよね？


「康二！」

「ふっかさん！」


名前を呼ばれて嬉しそうにふっかさんに駆け寄る康二は
飼い主に呼ばれた犬みたいで、
ありもしない尻尾がぶんぶんと
揺れているように見えた。


「今日も来てくれたん？」

「ん。…迷惑だった？」

「んーん。待ってたで」

「そか。へへ…///」


まるでカップルのようなやり取りに
なんだか変な気持ちになる…

ふっかさんの照れた顔は
康二がいるたび何度も見てきたけれど
やっぱり慣れない…


「あー…のさ、」

「うん？」

「今度の土曜日さ、バスケの試合あんだけど…さ、」

「うん」

「見に、来ない…？あ、いやっ…忙しかったら全然断ってくれて良いから…！」


バスケ部所属のふっかさんは、
女を落とす時必ずバスケの試合に呼んでいたけど…

こんなに緊張して誘ってる所なんて見たことが無かった。


「え、行ってもえぇの？俺ほんまはずっとバスケやってるふっかさん見たかったんよ〜。絶対かっこいいやん！楽しみやなぁ♪」

「かっこいいとこ見せれるように頑張るわ。応援して？あの…、うん。康二の為に頑張る、から…」


にこにこ笑う康二に絶対他の女には言ったことが
ないであろうセリフを投げるふっかさんに驚いた。

その表情は照れ臭そうで、
頭を掻きながら康二から目を逸らしていて。

何だか見てはいけないものを見てしまったかのように感じた。

でも、そんなふっかさんが羨ましかった…。


「…俺も誘おっかな。サッカーの試合」

「？」

「今度の土曜日。邪魔しよっ(笑)」


楽しそうに笑う二人に置いて行かれるのが、
なんだか寂しかったから…。





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