[木村良平] 満月の夜に…

Seven ページ9

「気になさらなくていいんですよ。」


私はそう切り出した。


彼は少し驚いたような表情をして、そのまま私の言葉の続きを待った。


「私、ちょっと職業上、人の表情をよく見なくちゃいけないことが多くて…。少しの違和感を感じたので、たぶん本当のことじゃないだろうな、と思ったんですけど……」


違いましたかね…？


余計なお世話だったかな、と少し後悔しつつ、彼の返事を待った。


すると、彼は少し笑って、


木村「いやー、参りました！…普段は役者、の様なことをさせて貰ってるんですけど、まさか、見破られるとは。」


役者さん…だったのか。


通りで、隠すのが上手なわけだ。


それに、密かに思っていたけれど…




確かに整った顔をしているなぁ、




と今改めて感じた。


それから…


声の響きや発声に、聞いていて耳に残る心地良さがある。


木村「…重ね重ね申し訳ないんですが、今夜泊まるならどこがいいか…なんて教えて頂けますか？」


少しオドオドした様な彼の態度がなんとも可愛らしいなぁ、と思いながら、


「えぇ、もちろんです。そのつもりでしたから…。もし、運が良ければ、タダで泊まることも出来るかと…。」


と言うと、


木村「本当ですか！？何から何まで…ありがとうございます！」


と、嬉しそうに返されるもんだから、私まで笑みが零れる。


「では、時間も遅いですし、早速向かいますね。」


私は、お願いします！


という声を聞いて頷き、そして足を進めた。

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