気になる彼女は用心棒 (ページ28)

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「な、なんだこれ！？」

よく見ると足元に鏡が置いてある。
いや、貼りついていると言った方が正しい。
その鏡の中から黒い手が足を掴んでいる。

『君さ、同僚を毒殺してるでしょ。』

「何故それを！！？」

男が図星とばかりに振り返る。
Aはケラケラと笑って答えた。

『なんでだろうね？』

「バレずにヤッたのに…誰から聞いた！！」

『誰だと思う？』

相変わらずAの瞳は黒く濁っている。
冷めたブラックコーヒーのように。
その瞳からは微塵も甘みを感じさせない。

『彼だよ。』

「は？」

Aが鏡の中から伸びる手を指差す。
手を振り解こうと足を激しく振っていた男は
素っ頓狂な声を出した。

『君が殺した彼が教えてくれたよ。』

そう言うと同時に鏡から黒い人型の何かが
這い出てきた。
足から手を離したソレは完全に鏡から
抜け出すと腰を抜かした男を見下ろした。

「ア、アンドリュー！？？」

《ユルサナイゼッタイニユルサナイ》

「な、なんで……お前は死んだはず…！？」

『私が呼んだの。復讐したいって言うから。』

《ユルサナイコロシテヤルコロシテヤル》

「ひ、ひぃぃっ！！！」

ズリズリとソレが男に迫る。
腰を抜かした男は涙目でAに叫んだ。

「た、助けてくれ！俺が悪かった！
聖杯は諦める。だから助けてくれ！！！！」

ソレは男に黒い手を伸ばす。
Aはニコニコと笑っていたがスッと
真顔に戻って冷たい目で男をみつめた。

『君が動くなって言ったんじゃないか。』

「あああああああああ！！！」

ドロドロとしたソレがとうとう男を飲み込む。
人一倍大きくなったソレはズルズルと
引きずるように鏡の側まで行くとAに
お辞儀をして鏡の中へ戻っていった。

『ふふっ。彼が人殺しでよかったぁ。』

静かになった広間でAが
そう呟いた時には瞳の色は戻っていた。

「プリン姉！」

ウィルスも除去し調子を戻したカルデア。
戻ってきて早々、立香とナーサリーが
勢いよくAに抱きついた。

「無事でよかったぁ。」

「ケガは！？ケガはしてない？？」

『だ〜いじょうぶ。』

ヨシヨシと2人を撫でていると包帯を巻いた
所長が申し訳なさそうに立っていた。

『オスノ。』

「お役に立てず申し訳ありません。」

『ううん。2人を守ってくれてありがとね。』

「…あれ？」