気になる彼女は用心棒 (ページ26)

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思えば俺は皆に頼りきりだった。

「所長！」

「何故戻ってきた！？ッ、この子を頼む！」

所長の足元にナーサリーが倒れている。
駆け寄ると急いで抱きあげた。

「マス、ター？」

「ナーサリー！しっかり！」

「あぁ苦しいわ。苦しいわ。こんな事になるなら
騎士様にちゃんと謝、」

「ナーサリー！！」

意識が途絶える。辛うじて息はしているが
このままだと危ない。

「…持って数分。その子を連れて逃げろ。」

魔術でシールドを創り俺達を守ってくれている
所長が汗を滴らせながらそう言った。

ホムンクルス…そんなモノまで召喚したのか！

「うがあ！」

突然、ホムンクルスが一斉に突進してきた。

「ぐぅっ！」「うわあ！！？」

シールドがガラスのように割れた反動で
立香達は壁に打ちつけられた。
なんとかナーサリーは抱きとめたままだ。

「しぶといなぁ。」

奥から男の声が聞こえる。
離れた場所で所長が力なく項垂れている。

思えば俺は皆に頼ってばかりだった。
今でもそうだ。誰かがなんとかしてくれる、
きっと助かるだろうなんて状況を甘んじている。

いつだって隣には仲間がいてくれた。
マシュが「大丈夫です」と励ましてくれていた。

「俺は無力だ。」

その声は脱力していた。また諦めに近い言葉で
自分に対する苛立ちでもあった。

ホムンクルスが迫ってくる。
腕の中で弱い呼吸を繰り返すナーサリーを
横目で確認する。

「まだだ。」

ナーサリーを背に立ち上がる。

「まだ終わらせなんかしない！」

力強く地面を踏みしめホムンクルスを睨む。

何度だってピンチはやってきた。
何度だって逆境に立たされてきた。
何度だって、死と直面してきたんだ！

「ガンド！」

何が出来るのかなんて分からない。
俺は魔法使いでもないし戦士でもない。でも、

ホムンクルスが唸る。
立香は再度、人差し指を銃口の如く向けた。

「お前たちなんかには負けない！！！」

「うがあ！！！」

ホムンクルスが吠える。立香も吠える。
咆哮がぶつかりあう広間。

「ッ！」

弾切れだ。成すすべをなくした立香に
容赦なくホムンクルスの豪腕が振り下ろされる。

『まだ負けてないよ。』

その声に目を開ける。
待ち望んでいた姿がそこにいた。

「プリン姉！」

流星のように金髪がサラサラと揺れていた。