気になる彼女は用心棒 (ページ25)

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勇将の下に弱卒なしページ25

「何言って、」

『だって君達も世界救ったんでしょ？』

「いやそれは立香君達のおかげで…」

いきなり何を言い出すんだこの人は！
一同、キョトンとする中
Aは変わらぬ調子で続けた。

『表面的にはそうかもしれない。けど裏方として
彼らを支えこの施設を持続させたのは君達。』

「買いかぶり過ぎです。」

『んー…じゃ例え話をしよう。英雄は初めから
英雄だったと思う？』

「え？そうじゃないんですか。」

『神話は分からないけど、大概は赤子だよね。
何の力もない1人の人間から始まりそれから
自分の友を家を家族を、愛するモノを守る為
自ら行動し認められて英雄になる。』

「それは貴女の憶測に過ぎない。」

後ろから誰かが反論した。
Aはゆるりと振り返り頷く。

『うん。例え話だもん。』

「…結局、何が言いたいんですか。」

マシュがそこらにある物全てを投げ対抗する。

『特別な事はしなくていいって事。
目の前の敵から目を離さず拳に力を込めて
思いっきりそれを振り下ろせばいい。』

「そんな事できたらやってるよ！」

不安が苛立ちに変わりつつある私達だったが
彼女は変わらず穏やかな目をやめない。

『どうして？君達は自分の家も守れないの？』

「…あんたなんかには分かんねぇよ。」

「俺達はあんたみたいに強くねぇんだ！」

爆発した。皆の中の不安が苛立ちが。
情けない私達をミルクティーの瞳は写し出す。

お願いだ。そんな澄んだ瞳で私達を見ないで。

思わず顔を背けてしまう私に
Aはしなやかな手を差し伸べた。

『それこそ買いかぶり過ぎだ。』

「え？」

『見てご覧。何の力も無い少女が闘ってる。
足は震え表情には不安を滲ませている。』

「あ。」

『確かに君達はただの一般人だ。だけどね、
歴史の中にはいつだって平民の勇気によって
起こされた革命がある。』

暖かい手が私の手を包む。

『強くなくていい。特別な事はしなくていい。
ただ、勝てる恐怖に歩みを止めない事。
少女に出来て私達に出来ない筈がない。』

体温が伝わっていくのを感じる。

『私が君達の勇気になるから。』

責めるでもなく肯定するでもなく
Aは優しく微笑んだ。

私達はその姿に
ピンク色のポニーテールを思い出した。