気になる彼女は用心棒 (ページ15)

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壁に耳ありページ15

「やぁマスター。どうしたの？

今日は大人しいじゃないか。

元気だけが取り柄の君が珍しいね。

悩み事かい？

そうだなあ。僕が当ててみせようか。

うーん…プリンが関係してるとか？

図星だろ？

アハハ。君は嘘が下手だねぇ。

素直なのが君の良いところなんだけど。

なんで分かったのかって？

君、彼女の名前を聞いた瞬間

鼓動が跳ねたんだ。気付いてたろ。

僕は耳が良いから

隠しても無駄なのさ。

どんな音でも拾ってしまうから。

え？もう聞いたのかって？勿論。

コソコソ話しても僕には筒抜けだし

不快な音ほど耳に入るし…はぁ。

どう思ったって言われてもねぇ。

僕としてはどうでもいい事だし。

所詮音も葉もないウワサだ。

証拠も根拠も何処にもない。

まさか信じた訳じゃないだろう？

ハハ。それを聞いて安心したよ。

…僕はね、マスター。

僻みからうまれた虚言に振り回される女性を

もう見たくないんだ。

ましてやソレのせいで

与えられるべきだった幸福を奪われる。

なんて事は、ね。

…なんだよ。

あのねぇ、一流の音楽家である前に

男なんだ。そりゃあ頼りないかもしれない。

それでもレディが悲しむ姿は御免だからね。

特に彼女の声はよく透る。

彼女の泣き声も興味深いけど…

生憎、僕は女性の泣き声を聴いて

興奮するような性癖は持ち合わせてないんだ。

どっかの誰かさんと違ってね。

とにかく！

姉として慕っているとしても、だ。

ちゃんと守ってやる事だな。

これは忠告だぞ。

せいぜい僕のようにならないように。

…彼女に同じ結末を迎えさせない為にも。」

アマデウスは少し寂しそうにそう言った。

“同じ結末”。

きっと彼は初恋の相手を思い浮かべている。
そう確信しつつも俺は黙って頷いた。