気になる彼女は用心棒 (ページ11)

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サーヴァントは眠らない。
暇を持て余した者達によって食堂は深夜、
バーと化す。

「あらぁ？珍しいお客さんやないの。」

カウンターの隅で1人呑んでいるAの
隣に腰かける。

「そないな所で呑まんと。うちと、ね？」

妖艶な雰囲気を醸しつつ接近してくる。
不意に酒呑の動きが止まった。

「あんた、よぅ見たらえらい可愛いらしい顔
してはるのねぇ。」

そう言いつつ顔を近づける。

『えーと？』

「あんな布で隠しておくんは勿体無いわぁ。」

『君みたいなべっぴんさんの前じゃ私の顔も
霞んじゃうから隠してるの。』

「嬉しいこと言ってくれるやないの。一体、
どれほどの子らを泣かしてきたんやろか？
あんたも悪い娘や。」

『えー？そんな事ナイナイ！私モテないし。』

「そうやろか？…うちやったらほっとかんよ。」

『…酒呑童子さん？』

「気付いとらんかもしれへんけどここにおる
男は皆、あんたを狙っとる。今もや。
男は獣やさかい。気をつけんと。やないと、」

「ペロッと食べられてしまうよ？」

艷やかな唇が弧を描く。
瞳の奥の奥まで覗き込もうとする酒呑に
Aは微かに微笑んだ。

『今夜は貴女が守ってくれるでしょう？』

酒呑の頬にスルリと手の甲を擦り合わせる。
ミルクティー色の瞳が優しく包み込むような…。

「…狡いヒト。」

酒呑は拒まず自身の頬を擦り合わせた。
角がライトの光で妖しく光る。

「喰えん娘やねぇ。」

『あはは。』

こうやって絆されていくんやろなぁ。
ボソリと酒呑はぼやいた。

邪気を感じさせないミルクティー色の瞳は
毒づいた心をも受け入れ溶かしてしまう。
単純そうに見えて掴めない、不思議な人間。

『そろそろ寝ないと。おやすみ。』

空いたグラスをみつめる。
頬に残る手の甲の体温を感じながら。

「…ほんま喰えん娘やわ。」

その気にさせといて甘えさせてはくれへんの。
見透かすようなあの眼差しを思い出して
人知れずゾクリとする。

あの木もれ陽に似た微笑みに
また、絆されてしまう。

『今夜は貴女が守ってくれるでしょう？』

「…ふふっ。鬼を惑わせるやなんて
面白い娘やこと。嗚呼、嗚呼。」

「危うく愛でてしまうとこやった。」

ペロリ。赤い舌が唇を這う。
暇を持て余した鬼の好奇心は尽きる事は無い。