裏切りの刀

君は綺麗なお姫様 ページ13

「今日は山姥切国広と馬当番よろしく。」

審神者の命を受け嫌々山姥切がやってきた。

備前「よろしく!山姥。」

山姥切「………よろしく。」

(何故 山姥…？)

好都合なことに備前は馬と相性が良かったようで
特に話すことなく山姥切は黙々と仕事を
こなした。

山姥切「(よし。後は餌を補充す…ん？)」

山姥切「うわっ！？」

視線を感じて横を見ると至近距離に奴はいた。

山姥切「な、なんだ？」

備前「山姥ってお姫様みたいだね。」

(…は？姫？何を言っているんだ？？)

備前「乱にみせてもらった絵本のお姫様。
金髪で緑の目で綺麗なの。」

山姥切「俺は綺麗じゃない！」

固まっていた山姥切だが綺麗という言葉に
反応しすぐさま否定した。
備前は大きな目をぱちくりとさせる。

備前「山姥は綺麗だよ？綺麗なものを綺麗って
言って何が悪いの？」

山姥切「っ……綺麗って言うな。」

布を深く被り直し備前から顔を背ける。

山姥切「俺は山姥切の写しとして作られた。
だが俺は偽物じゃない!」

はぁっと盛大に息を吐き出す。
そんな山姥切を黙って見つめていた備前だが
グイッと布を引き寄せ山姥切と顔をあわせた。

山姥切「！？？」

目と鼻の先に備前の顔がある。
いきなりの事に山姥切の頭はパニックになった。

備前「分かってんなら自己否定するな。」

心の奥底にすんなりと入った言葉と
真剣な備前の目が真っ直ぐに山姥切を射抜いた。

備前「お前が偽物かどうかなんて興味ないし
本物すら見たことないんだから分かんない。
でもさ、自己否定は駄目だよ。それは
丹精込めて生みだしてくれた人間を否定する
事になるんだ。」

備前「自信を持ちなよ。誰がなんと言おうと
山姥切国広は美しい刀だ！」

無邪気に太陽が笑う。眩しくも暖かい、
誰もが安心してしまう太陽が。

山姥切「…あぁ。」

自然と笑みが溢れる。

備前「やっと笑った！うんうん。思った通り
笑顔も綺麗。お姫様みたい。」

山姥切「お姫様はやめてくれ。」

備前「じゃあー…王子様？」

不意に馬が備前の顔に顔を擦りつける。

山姥切「王子様…か。」

馬とじゃれ合う備前をみつめる。

(王子様の名に恥じないようにしないとな。)

フッとニヤけた山姥切の布を馬がムシャムシャ
していた。

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