【ツキウタ。】夕月夜の長月夜 (ページ7)

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｢きりーつ、礼、着席｣

疲れ果てたような声の号令係。
それに合わせて行うだけで私は別のことを気にしていた。
２年棟はここの大学の最上階、３年棟はここより二つ下。
迎えに来る、と夜さんは行っていたけど手間がかかるだろうと思い、私は友達に声をかけられる前に教室を出た。

早く行かなきゃ…

そう思うのだけれどそれは何故？
夜さんに迷惑がかかるから、とは違う気がする。
私はすごく浮かれていた気がした。
何で？夜さんと会ってからずっとそうだ。

私は何がしたい？

私は何をどう思っているのだろうか。

自分の意識だけが別のところに行ってしまったように自分の気持ちがよくわからない。

｢何だろ…｣

｢Aちゃん！｣

｢…！？よ、夜さん｣

ようやく意識が戻ってきたようだ。
いきなり声をかけられてびっくりした。
変な声が出なくてよかったと心底思う。

｢ごめんね、迎えに行くって言ったのに｣

｢大丈夫ですよ？わざわざ来てもらうのは遠いと思ったので…｣

｢確かに普段よりも多く階段を登ってきたよ…｣

そういう夜さんは笑ってはいるけれど肩が微かに上下している。

｢夜さん、走ってきました？｣

｢え、バレた？｣

｢ちょっと息が切れてるようなので…｣

えへへ、と照れ笑いの夜さん。
さっきからいろんな表情を見せる夜さん。

"可愛い"

なんて思っては失礼だろうか。
歩きながら私はまた物思いにふけっていた。

一切周りを気にせずに…。
そのせいでまた走ることになるとは思いもしなかった。