兎と微熱 (ページ4)

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あの日から1週間は経った。

うだるような暑さに
真っ黒なあたしのパンプスも焼け焦げそうなくらい熱くなっている。

いつもとおなじ仕事帰り。
また明日も出勤だし
いっそのこと焦げてくれたらラクなのに。

…そんなことを考えていたら

「あ。おねーさんだ」

！

ウソ。
あのときの色男…くん…

もう一生会うことなんて無いっておもってたから
おどろいて
つい目をそらす

前とちがってフンワリ降りた前髪。
すこし優しそうにみえる目。
スウェットに、サンダル…
あたしのスーツとは正反対。

右手にもってるコンビニ袋をブンブン回すと
こっちに駆けてきた。

…近所なの？

「ひさしぶりだね。元気？」

「あぁ。はい…」

あれ？そういえばあたし…
どうやって会話してたんだっけ。

まっすぐ向いた黒目に
すべて見透かされそうでこわくなる。

…やっぱり。

とてつもなく色男。
酔っているときから分かっていたけど
整いすぎてる顔。

そりゃあ、いい気分にもなる。

「あれ。まさか、覚えてない？」

「いや！ちがくて。
…その」

「うん」

のぞきこむ彼の顔。

…ちかすぎて息がとまる。

理性とかそういうの
ふき飛ばすようなそんな目。

「ふふ。
まだ…
鉄のパンツ履いてるの？」

…？

あたしの頬にすこし触れたあと
なぜか満足気にわらう彼。

鉄のパンツ…

「！、」

「あ。動揺した」

ニタッてわらうともっと色っぽくて
加速したあたしの鼓動。

「あのあとから気になってた。
どうしてるかなって」

…そういう彼の言葉。

ひとつひとつで
身体がカンタンにいうことを聞かなくなる。

「もしかして。電話くれた？」

「えっ」

「あたり？」

「それは…つい、」

「あいたかった？
おねーさんも。俺に」

……「も」ってなんなの…

「俺もあいたかった。って意味だけど」

…心読めるワケ？

「はい。ハグ」

「なんの、ハグ？」

「再会の？
というより
…
おねーさん抱きつきたそうにしてるから」

「な…」

「そんな顔されたら。
俺だって我慢できないよ？」

あの綺麗な手で引き寄せられる。
身体ごと全部つつみこまれる。

なに…なんなの…

いつのまにか
夏の暑さなんて感じなくなっていた
だって心臓のまわりがほてってあっついし

「名前。チョン・ジョングク。
グクって呼んで？」

耳元でささやくその声に
…かるく熱が出る。

今年の夏は
いつもとすこしちがうみたいだ。

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