兎と微熱 (ページ2)

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…どれくらい居ただろうか。

店に着いてから一人客なりに案内されたカウンター。
あんがい居心地が良くて
つぎにつぎにとお酒を頼んでいた。
ハイボール、ハイボール…たまにビール。

ハイボールが太りにくいって聞いたけど
酔ってきたらそんなのどうでも良くなって
結局だいすきなビールに行き着いた。

はぁ…おいし。

しばらくして
スマホを見るともう23時で目が点になる。

「おっと…」

やばい…
ちょっと酔ってる。
…ていうか
ちょっとどころか。
かなりキてる。

も…大人になってこんなの恥ずかしーな…

あたりを見わたしてもカップルだらけ。
ここをふらふら歩くなんて
恥ずかしすぎて出来るワケない。

一旦席に落ち着く。

「すいませ…。ビールください」

駄目だこりゃ。
完全に
…タガが外れた。

こうなったら飲む！
だってあたし誰にも迷惑かけてないしー…

キンキンに冷えたビールが喉をうるおす。

「…ん」

酔うと口元がゆるいんだ。
こぼれたビールが首をつたってすこし服を濡らした。

「おしぼり……」

「はい」

…？

おしぼりが浮いていた。

大きな
綺麗な、手に乗って。

「いらないの？」

ぱっと前をみると男の子があたしを見てわらう。

「やだ…。ナンパ？」

「ぶっ」

思っても無いけど
すこし思ったようなことを言ってしまう。
彼はわらうと目が垂れて、…かわいいような。

「そう。ナンパ」

彼のおしぼりで拭かれたあたしの口元。
おしぼりのにおいじゃなくて
彼の香水のにおいが気になって

おもわずクンクンと彼に近づく。

「おねーさん何、犬なの？」

「だって、いいにおいで」

「ふふ。
じゃあ、思う存分かいでていいよ」

彼の腕があたしに回る。
こんなのってあり？
あたしいま、酔ってるからなんでも許せる。

「どう？もっと酔ってきたんじゃない」

…挑発的な目。

ずっしり重たい腕と
このにおいと…

おかしいな。

この色男だから
許せてるだけかもしれないって思うのは何？

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