ウチの末っ子は手に負えない Ⅱ (ページ39)

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side - 桃

「最低」

背筋が凍った、今まで何度も見たこの景色は何度見ても慣れる事は無い。酷く冷めた目で俺を見るラウが頬を抑えながらそう言い放った。

「…まあ別にいいけど。」

「僕頭冷やして来るから、家で待ってて。」

白いマスクを鼻まで被せて、ぱたん、と静かに戸が閉まる。分かってる、ラウは俺の事を捨てないって、分かってる筈なんだけど。

ばくばくと逸る心臓と、少し遠くで流れてるテレビの音がやけに煩く感じられた。暫く動く事は出来なくて、呼吸さえも不慣れな出来に変わる。

「あ、…ど、しよ、」

やっと声を発したと思えば情けない程掠れた声に、ぎゅうぅ、と痛む心臓。涙は頬を伝ってカーペットに跡を作る。

ふらふらと重い足取りを感じながら、ソファに座り込む。俺の気持ちと比例して、ソファは深く深く沈んでいく。

カチ、カチ、秒針は動き続ける。涙は止まらない、ラウが出て行ってから何分経っただろう。

それとも何時間？そう疑いたくなるくらいには長く感じられた、ガチャりと少し離れた玄関から扉の開く音がした。小さく袋の音をさせながら、後にリビングの扉も開いた。

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