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学校で時間を潰す時のように、腕を枕にして顔を伏せてみる。それでも、視界に舘さんが居ないのは落ち着かなくて。少しずらして、舘さんを見詰めた。
「そんなに見詰められるとやりにくいんだけど、」
「良いじゃん。俺だけの特権、」
この景色でこの人を見れるのは後何回だろうか、目に見えない不安が毎日着々と積もっていくのに気付いてないフリをした。
あわよくばこの人の最後が俺でありますように、何て。そう願いながら毎日この景色を目に、頭に刻む。
何だか見ていられなくなって、折角ズラしたのにって思いながらも顔を伏せるのはいつもの事。今日も真っ暗な視界に少し安堵して、薄く息を吐いた。
「また変な事考えてるでしょ、」
きゅ、と蛇口を締める音を立てて、後に小さな足音が俺の元に近付いてくる。
「…、考えてないよ。眠いだけ、」
「ウソ、それ毎日使ってるんだから。」
「流石に新しい言い訳考えたら？」
俺の近くに立って、紅く咲いた華を愛おしそうに撫でるその手付きは酷く残酷で、とても切ない。
「そんな事したら離れられなくなっちゃうよ 」
「離れなければ良いよ」
「ずっと隣に居て」
愛は1番の呪いだと、そう言ったのは数年前のこの人だった。絶対にハマってしまうと分かり切っているから、ワザと距離を置いているのに。
どれだけ必死に足掻いても、あらゆる手を使って近付いてくる舘さんにいつの日か俺は遂に堕ちてしまった。
「ね、ずっと一緒に居よう。」
なんて、根拠の無い言葉を優しく掛けては俺の体に絡まる鎖。どんなにもがいても絶対に解ける事はない、
「拒否権なんて無いくせに。」
「ふふ、分かってるなら言わないでよ」
見上げれば、心底愛おしそうに俺を見詰める瞳と視線が交わった。もうきっと、俺はこの人から抜け出せない。
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作者名：みゅうつう | 作成日時：2023年4月1日 17時
