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「…、女の人？」
口の中いっぱいに広がる甘さを飲み込んで、問い掛けてみれば舘さんの綺麗な形をした眉が中央に寄っていくのに気付いた。
「うん、昨日御一緒した共演者さん」
昨日は確か、SnowMan全員でのテレビ番組出演の日で、何事も無く撮影を終えたはず。昨日御一緒させて頂いた女性共演者さんは1人だけだから、思い浮かべている人で間違いは無いだろうけど。
「…んー、？」
最後の一口をフォークに刺して、口に含めばしっかりと咀嚼して飲み込んだ。ジ、と俺を見詰める舘さんに口に残るトーストの甘さがやけにくどく感じた。
「撮影終わり、楽屋前で話してたでしょ？」
「急に距離が縮まったと思えば、」
思えば、その先は言わずともこの空気感で安易に察すことが出来た。
「……、ああ、あれね。」
暫くじっと考えてみれば、ようやく舘さんが言ってる事の正体がわかって、その上で改めて目の前に座るこの人の愛おしさを実感した。
「キスじゃなくて、髪についてたゴミを取ってあげただけだよ。」
俺は何一つ嘘を言ってない、言ってないけど。この人がこの事実をすんなりと納得する様な人じゃないのは知っていた。
「…それにしても凄く近くなかった？」
「そうかな、まあ舘さんがそう言うんなら。」
「もう少し距離感を考えてみるけど、」
椅子から立ち上がって、いまさっきまで使っていたお皿と、フォークとナイフを手に取りキッチンまで運ぶ。
水道の、銀に反射して映る俺の首元には紅い華が咲き乱れていた。ああ、明後日までに無事に消えると良いんだけど。
「俺がやるよ、ラウは座ってて。」
顔を覗き込んでくる舘さんの腕は俺の腰に回っていて、明らかにその気を感じさせる触れ方にイヤでも身を震わせてしまう。
「…、舘さんのえっち。」
「これで反応しちゃうラウも十分えっちでしょ」
最後に背中をぽん、と撫でられて。やる事が無くなってしまったし、座っていた椅子に戻る他なかった。
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作者名：みゅうつう | 作成日時：2023年4月1日 17時
