3: ページ4
.
.
「すいませんっ、遅れました〜」
「あ、黄瀬ちんだ」
業間休みでざわつく理科室が一旦静止する。特に女子。
先生にヘラヘラと話しかける金髪(黄髪？)の黄瀬涼太くんも、同じ部活に所属する友達だ。
モデルとしても活躍しており、このように定期的に仕事で遅れてくる。
不意に目が合うと、満面の笑みで私たちに手を振った。
「あ！ Aっち〜、紫っち〜……ってちょっと！ そこ距離近すぎっスよ！ もっと離れて！」
「おい黄瀬。今、先生は君のモデル業を尊重して、プリントの内容を事細かに説明してやってるんだ。その態度はーー」
「わー！ スンマセン！ マジ先生の授業だけは絶対受けたくて抜けてきたんでーー」
あたふたとする黄瀬と先生のやりとりを見て私と紫原くんは小さく笑う。
なんとかご機嫌取りに成功した彼は何度も先生に会釈しながらこちらへと歩いてくる。
「黄瀬ちんおはよ〜」
「おはよう、今日も忙しそうだね」
「って全然離れてないじゃないスか！ おはよう！」
「なんでキレ気味なのよ」
「フジュンイセーコーユー、ってやつっス！」
「それ黄瀬ちんがよく先生に言われてる言葉じゃん〜」
3人で軽口を交わしながら、私の席付近に移動する。
黄瀬くんは隣の席なので、同じ班なのである。遅れてきた分のプリントを写させてあげよう。
黄瀬くんに渡したプリントを覗き見る紫原くんが否定的な声をあげた。
「うわ〜、Aちん、ちょっとこれは壊滅的じゃない？」
「えっ、見た通り書いたんだけど……」
「俺はAっちを信じるっス！」
「いやいやおかしいでしょ〜、メダカのイラストっていうか〜、インフルエンザの時に見る夢みたいになってんじゃん」
「……。もういいの！ ポイントは抑えてるし！」
「自分でもそう思っちゃった顔してたっスね、今」
その時黄瀬くんの言葉に被るようにチャイムがなる。
紫原くんの席は少し遠めなのでお互いに軽く手を振り、元の席に座った。
「ーーおはよ、Aっち」
「？ さっきも言ったよ？」
「やっと2人になれたからもう一回言ったんスよ！」
黄瀬くんは私の方をじっと見つめて愛おしそうな目で笑う。
こうやって何人もの女の子を飼い慣らし、芸能界という人気家業をバスケと並列で行っているのだからやはり器用な人間だ。
「でもやっぱり、Aっちは隙ありすぎっス。……結構心配になる」
……そう、だよね？？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 74人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えの(プロフ) - hamoさん» こちらこそリクエストありがとうございました。感想まで頂けると思わなかったので、嬉しいです涙。更新頻度は遅くなりますが、細々と書いていこうと思うのでお付き合い頂けると幸いです☺︎ (3月6日 0時) (
レス) id: d13c000863 (このIDを非表示/違反報告)
hamo(プロフ) - リク書いていただいてありがとうございました……！本当に全てにおいて最高でした！！青峰くんのいいところがたくさん出ててますます青峰くんのことが好きになりました！！続け方も天才です！！次も楽しみにしてます！！！がんばってください！！！ (1月9日 9時) (レス) @page42 id: c94f084532 (このIDを非表示/違反報告)
えの(プロフ) - ななさん» ななさんコメントありがとうございます！私もそんな黄瀬くんを書くのが好きなのでご期待に添えるように頑張ります。セリフも甘々で素敵ですね！引き続きよろしくお願いします☺︎ (1月8日 2時) (レス) id: d13c000863 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 初コメ失礼します！黄瀬涼太でヤキモチやいて甘えてくるシチュがみたいです、、俺が誰より〇〇のこと好きなのに的なこと言ってたらすごい嬉しいです… (1月4日 23時) (レス) @page37 id: b78e46be6f (このIDを非表示/違反報告)
えの(プロフ) - hamoさん» 早速のリクエストありがとうございます！2人きりで部室はロマンチックですね。素敵な青峰くんになるように善処致します。引き続きよろしくお願いします☺︎ (12月21日 0時) (レス) id: d13c000863 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：えの | 作成日時：2022年10月17日 1時
