【d!】ご令嬢が思い出したので【軍パロ】

▽対象外な男たち ページ29

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間に口を挟ませぬよう矢継ぎ早に話せば、母国の海のような穏やかな心を持つ彼は悲しげに口をへの字に曲げた。


「Aちゃん、大丈夫って言う人の大半は大丈夫じゃないんよ…？」

『私は彼らに傷つけられるような行いは受けておりません。寧ろ謝罪をするべきは私の方です』

それだけはハッキリ断言出来た。
前世の記憶を振り切れない事も、多くの人からの好意に困惑している事も私以外誰も悪くないのだ。

自分で語っておいて喉の奥がツンとしたが、それ以上にしんぺい神様が自分のことのように悲しげな顔をしたのが申し訳なかった。


「……うん、これ以上聞くのは返って嫌な気分になっちゃうよね」

『心配をおかけ致しました』

「そりゃするよ。医者としても、俺としても」

彼は優しく私の下瞼に親指を這わせながらそう言った。
普段ならドキリと心臓が音を立てそうなシチュエーションだが、不思議と緊張はしなかった。


「じゃあ、早速……」

『？』

「寝よっか！」

「隈ができてる」とぽそり呟いた軍医は、あれよあれよと言う間に手を引いて私をベッドへと横たわらせた。


『わ、私どこも悪くないですよ？』

「これから悪くなっちゃうと困るからね。あ、添い寝がいる感じ？」

『ま、間に合ってますっ』

悪戯っぽくウィンクを決めた彼は慌てて布団を掛けた私にクツリと喉を鳴らして笑った。
ポンポンとリズムをつけて布団を叩く姿はいよいよ育児だが、彼の思惑通りに眠気はやってきて。


「おやすみAちゃん、良い夢を」

私の意識は微睡む眠りの中へと落とされていった。





何か遠くで話し声が聞こえる気がして意識が戻る。


「あ、悪い起こしたか？」

「お早うAちゃん、眠れた？」

頭の上から柔らかい声が2つ。2、3眼を擦って目を開くとそこにはしんぺい神様に加えて兄さんが座っていた。


「安心そうなお迎え呼んできたよ」

「安心そうて……他の奴らどんだけやねん」

何故お迎えなんて仰々しい事になっているのかと疑問に思ったが軍医曰く「軽く診察を行ったところ貧血っぽい」らしい。
兄さんが選ばれたのは本人曰く「俺は安全枠だから」だそう。


「夕飯は食べられそうなん？」

『……今日は、ご遠慮させて頂こうと思います』

「ん、じゃあ行くか」

「また遊びにきてね〜」

兄さんに手を取られ、ゆらゆら手を振るしんぺい神様にお礼を言って部屋を出た。
昼寝というには些か眠り過ぎたようで、辺りはもう赤紫の夕日が空を彩っていた。

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