▽牙を見せた狼と ページ14
・
『あ、の。ゾム様…？』
「……」
宴もたけなわ、徐々に酒豪達の本領が発揮される中でお酒にあまり強くない方々がリタイアしてきた頃。
急にゾム様は酔い覚ましがしたいと仰って、隣にいた私の手を引いて食堂から少しだけ離れたバルコニーまで連れてきたのだ。
あまりに勢いつけて立ち上がるものだから他の幹部達が酷く驚いていた。
訳もなくお供にされてしまった私の背に、コネシマ様あたりのヤジが飛んできていたが何を言われたのかまるでわからなかった。
「外、思ったより寒いな……」
『そ、そうですね…？』
「せやんな」
漸くなされた発言に同意を返せば抑揚の無い声で続けられる。
かと思えばグイッと繋いでいた腕を引かれ、彼は私の体をすっぽりと覆うように抱き込んだ。
「なぁなぁ、A」
『はい？』
「本当は、オスマンと何したん？」
ほぼ0距離で覗き込んでくる軍人は餌を見つけた獰猛な狼を錯覚させた。
お酒のせいなのか、いつにも増して早口で少しばかり舌ったらずな口調で喋る。
『言えません……』
「なんで？な、アイツと今以上の事したん？」
『……』
無言の肯定とは、まったく良く出来た言葉である。
ギラギラと光る瞳から逃れようと目を逸らせば、それすら気に入らないと言う様により強く腕を回される。
「……オレが、オレのが好きやで」
『ゾム様……』
「オスマンと結婚するん？」
小さな子がヌイグルミを抱いてぐずるように、私の頭に額を合わせてぐりぐりと擦るゾム様。
普段無い甘い声に腰が引けた、引いた所でこの手から逃れることなど出来ないが。
『それは、まだわからないのです』
「ならオレにしてや、A」
どうして、彼らは私を求めるのだろうか。
本来、婚約を結んだとて我々国には一つも国益などありはしないと言うのに。
「オレが一番好きや、なぁ……応えて」
『ま、お待ち下さ……んんッ！』
ガブリと唇を食べんとばかりのキスをされる。
今度こそ本気で脱出しようと身を捩るがビクともしない、何度も角度を変えて繰り返されるそれは最後に首筋を一噛みして終わりを迎えた。
『は……っ』
「跡、残ってもうたな」
つうっと首に這わされた人差し指、噛まれた其処は熱く熱を帯びていた。
「急で、ごめん。でもほんまに好きや、ごめん」
『私は……』
どうして彼は謝るのだろうか。
「もうちょい酔い覚ましてくるわ」そう言った彼は、身軽な仕草でバルコニーの柵を越えて飛び降りてしまったのだった。
ラッキーゲーム
hoi
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1294人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
奥山乃愛(プロフ) - niさんやsnさんにも愛されたいです（恋愛的に）無理せずに頑張ってくださいね！ (2022年11月2日 16時) (
レス) id: fdc1778b4b (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - モモさん» お祝いのコメント感謝申し上げます。途中更新期間が空いてしまい申し訳ありませんでした。ご期待に添えたものであれば幸いです、これからも是非にお付き合いくださいませ。 (2019年11月30日 23時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
モモ(プロフ) - 続編おめでとうございます。リクエストの小説も楽しく読ませて頂きました。ありがとうございますm(_ _)m相変わらず言葉の言い回しが美しく素晴らしい作品だなぁと改めて思いました。冬は何かと忙しい時期になると思いますが、無理をしない程度に頑張って下さい(*^^*) (2019年11月28日 12時) (レス) id: 9f311d580c (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 猫夢さん» こんばんは、好きの一言が何より嬉しいので無問題です…。ありがとうございます。 (2019年11月24日 19時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
猫夢(プロフ) - 語彙力がないけど言いたいので失礼致します。好きです... (2019年11月21日 13時) (レス) id: e485f856c4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あん肝ポン酢丸 | 作成日時：2019年9月22日 15時
