▽昼を過ぎても忙しく ページ2
・
「A、お疲れこれから仕事？」
『ひとらんらん様！お疲れ様です』
畑に面した廊下を歩いていると白色の軍人から声をかけられる。
収穫をしている最中だったのか、片方の手には野菜や果物の乗った籠を持っていた。
「ねぇ、ブドウって好き？」
『…？はい』
「良かった、沢山取れたから夕飯の時にでもお裾分けするね」
『ありがとうございます！』
「えー、いいなぁ！私もほしぃ〜っ！」
『お、オスマン様…！？』
「お昼ご飯ぶりやね、A嬢」
後ろから違和感ありありの高い声がしたので驚いて振り返ると、緑色の外交官が楽しそうに笑っていた。
彼は偶に、こうして町娘のような小芝居がかった喋り方をする事がある。
「そんなら畑手伝えよ」
「えー」
「嫌ならいいけど？」
「嘘々、俺ひとらんに用があったんよ」
「じゃあまたね」と手を振って外へ向かう彼に、ひとらんらん様はマスクの下で苦笑いをしたようだった。
2人と別れ給仕室への途中、両手に書簡を持った橙色の軍人と鉢合わせた。
「あ、エ……ちゃうわ、Aか」
『ご機嫌よう、チーノ様。誰かお探しですか？』
「エーミール見んかった？」
キリッとした眉の間に珍しく深い皺を刻んだチーノ様が尋ねる。
生憎此処に来るまでに彼とは会って居ない為、私は首を横に振った。
「はぁー、自分であれこれ指定しといて部屋にもおらんしアイツ」
『まぁまぁ……』
「いた、チーノ君！探したで」
「エーミール！そりゃこっちの台詞や」
彼の後ろから小走りでやって来た亜麻色の紳士。
どうやら荷物運びを手伝おうと思い戻ったところで、入れ違いになってしまったらしい。
「Aご令嬢も、ご迷惑をおかけしました」
『いえ、私は何も……』
「文句言ってもええんやで？」
『エーミール様に文句などございませんよ』
律儀にも気を遣った言葉をかけてくれる彼の後ろからヤジが飛ぶ。優しく微笑む紳士の後ろで、悪戯好きの男はベッと舌を出した。
給仕室からカートを受け取って総統室へ向かう。
今日の茶菓子はバームクーヘンだそうだ。
「じゃあ、また後でな」
『トントン様』
「Aさん、これから仕事かご苦労さま」
隈を作った目が細く緩められる。
目的の部屋から出てきた彼は、労わりと共に一度優しく私の頭を撫でるとそのまま去っていった。
荘厳な扉を緩く作った拳で4度ノックする。
さぁ、仕事の始まりだ。
『グルッペン様、お茶をお持ちしました』
「Aか、入れ」
ラッキーゲーム
hoi
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1296人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
奥山乃愛(プロフ) - niさんやsnさんにも愛されたいです（恋愛的に）無理せずに頑張ってくださいね！ (2022年11月2日 16時) (
レス) id: fdc1778b4b (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - モモさん» お祝いのコメント感謝申し上げます。途中更新期間が空いてしまい申し訳ありませんでした。ご期待に添えたものであれば幸いです、これからも是非にお付き合いくださいませ。 (2019年11月30日 23時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
モモ(プロフ) - 続編おめでとうございます。リクエストの小説も楽しく読ませて頂きました。ありがとうございますm(_ _)m相変わらず言葉の言い回しが美しく素晴らしい作品だなぁと改めて思いました。冬は何かと忙しい時期になると思いますが、無理をしない程度に頑張って下さい(*^^*) (2019年11月28日 12時) (レス) id: 9f311d580c (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 猫夢さん» こんばんは、好きの一言が何より嬉しいので無問題です…。ありがとうございます。 (2019年11月24日 19時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
猫夢(プロフ) - 語彙力がないけど言いたいので失礼致します。好きです... (2019年11月21日 13時) (レス) id: e485f856c4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あん肝ポン酢丸 | 作成日時：2019年9月22日 15時
