▽午前10時の人質体験 ページ38
・
『＿＿Aと申します』
「何故お前を国が探しているッ！？」
『城の召使いですから』
恐れと怒りが混ぜられたような4つの瞳に私は前衛的な法螺を吹いた。
彼らと過ごしているうちに、自らの精神が随分と鍛えられた事をこんな形で知るとは。
「なァ、国がいちいち失踪した召使いを探すか？」
『さぁ…？もしかしたら人違いかも知れませんね』
「チッ、考えても仕方ねぇ！早くこの女をどうにかしねぇと！」
興奮状態の短髪はダンッと安っぽい床に踵を落とした。
赤茶の方も態度には出ていないが、それなりに焦っているらしく当てられた刃が絹製のワンピースを僅かに裂いた。
正直賭けた発言であった、名乗った時点で彼らが気付く可能性も考えてはいたがどうやら杞憂に終わったらしい。
これは貧困層に知識を得る機会が無いという社会問題を示していたが、今回ばかりはそれに救われた。
「多少は傷になっても構いやしねぇさ！袋に詰めて積み荷と混ぜちまえ」
『(え……！？)』
盗人猛々しいとはこの事か。この期に及んでまだ目先の金貨に目を眩ませているらしい男達。
此方に近寄ってくる短髪の男の片手には、干し肉などを入れる大きな麻袋が握られていた。
「おら！大人しく入らねぇか！！」
『やめ…！』
いくら麻だって袋を縛られてしまえば命の危機だ。
初めて抵抗の意思を見せたが、男2人に私が敵う筈もないわけでして。
「おい＿＿誰に手ェ出しとんねん」
ヒーローは遅れてやってくる、よく聞く話だが体験したのは初めての事だ。
普段愉しげに細められるイエローの瞳は闘犬のような壮烈な雄々しさを滲ませていた。
『シャオロン、様……』
「ごめん、遅なったわ」
「何だおま………ッぐ、！！？」
「お前、先行すんな言うたやろ！」
私の方を向いて笑う彼に、短髪の男は怒りを露わにして拳を振り上げた。
シャオロン様が殴られるとは露ほども思わなかったが、後続して到着したコネシマ様が短髪の顔を掴んで床に倒した事で狭い馬車はガタリと大きく揺れた。
「お前ら…！そこから動くな！！」
『っ……』
胸部の服を貫いた刃が一段と身に迫る。
余程気が動転しているらしい、胸骨の厚い心臓部より首を狙った方が刺しやすいのに…。
「A！」
「待てシッマ、オレに行かしてや」
片手を上げてひらひらと振る彼には焦りは見られない、無言で頷いたコネシマ様の横をすり抜けゆっくりと前進してくる。
「なぁ、ソイツが誰やか分かっとる？」
ラッキーゲーム
hoi
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1295人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
奥山乃愛(プロフ) - niさんやsnさんにも愛されたいです（恋愛的に）無理せずに頑張ってくださいね！ (2022年11月2日 16時) (
レス) id: fdc1778b4b (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - モモさん» お祝いのコメント感謝申し上げます。途中更新期間が空いてしまい申し訳ありませんでした。ご期待に添えたものであれば幸いです、これからも是非にお付き合いくださいませ。 (2019年11月30日 23時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
モモ(プロフ) - 続編おめでとうございます。リクエストの小説も楽しく読ませて頂きました。ありがとうございますm(_ _)m相変わらず言葉の言い回しが美しく素晴らしい作品だなぁと改めて思いました。冬は何かと忙しい時期になると思いますが、無理をしない程度に頑張って下さい(*^^*) (2019年11月28日 12時) (レス) id: 9f311d580c (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 猫夢さん» こんばんは、好きの一言が何より嬉しいので無問題です…。ありがとうございます。 (2019年11月24日 19時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
猫夢(プロフ) - 語彙力がないけど言いたいので失礼致します。好きです... (2019年11月21日 13時) (レス) id: e485f856c4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あん肝ポン酢丸 | 作成日時：2019年9月22日 15時
