忘れていたもの ページ38
ふと、お父さんの大きな手が私の頭に触れる。
また頭をくしゃくしゃするのかな……と思って身構えていたけれど、どうやら違うみたい。
私の濡れた髪を手のひらで滑らせると、髪の毛が風に吹いたように、ふわっとなびいた。
『……え？』
何が起こったのか分からず、髪の毛に指を通してみる。
……さっきまで水滴が滴っている程濡れていた髪の毛は、一瞬のうちにすっかり乾いてしまっていた。
これって、お父さんの渇きの能力じゃ……。
こんな事にも使えるんだ。
便利。
「風邪、引くんじゃねェぞ。」
………俺が困るからな。
お父さんはそう付け足して立ち上がると、脱衣場のかごに羽織っていたコートを入れる。
その様子をじーっと見ていると、その視線に気がついたのか、お父さんが嫌そうな顔をして眉をしかめた。
「俺も風呂に入る。とっとと出てけ。」
お父さんは私の服に鉤爪を引っ掻けると、右手でドアを開けて、かなり乱暴に私の体をぽーんと放り投げた。
お父さんにしては扱い雑じゃないですかね。
痛ったぁ……と打ったところを押さえていると、後から扉が閉まる音が聞こえてきた。
『あ、待っ……』
すぐさま振り替えってみるけど、私の視界には固く閉ざされた扉が一つあるだけだった。
遅かった、か。
……さっきのお礼、言いたかったのにな。
でも。
さっき、お父さんに撫でられた頭を押さえる。
少しだけどお父さんのぬくもりを感じた。
これまで何回か撫でられてはいたけれど、やっと安心できる場所に着いたからなのか、じわりじわりと後からそれを感じることが出来た。
……こんなにも、暖かかったんだ。
忘れていたこの感触。
もう、こんな暖かい気持ちになるなんて一生無いと思ってた。
それを思い出させてくれたのは少し扱いは雑だけど、本音は優しい、大好きなお父さんでした。
『えへへ。これって当たり前の事なのに……すっごく、嬉しいなあ。』
顔をにへっとさせると、しばらくその余韻に浸っていたのだった。
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清雅。(プロフ) - あめ。さん» ありがとうございます!!!お父さん感のある鰐さんを表現するのにかなり苦労したので、そう言ってくださるととても嬉しいです！これからも体に気をつけて更新していきます！ (2019年9月25日 23時) (
レス) id: 54a20fa017 (このIDを非表示/違反報告)
あめ。 - 意外と鰐さんがちゃんとお父さんしてて笑いましたw面白いですね！体に気をつけて頑張ってください！ (2019年9月23日 21時) (レス) id: 889e95be0e (このIDを非表示/違反報告)
清雅。(プロフ) - マリン さん» ありがとうございます!!!更新頑張ります(*^-^) (2019年9月7日 18時) (レス) id: 54a20fa017 (このIDを非表示/違反報告)
マリン - 初めまして！面白いです！更新頑張ってください！ (2019年9月7日 9時) (レス) id: 6f6628a406 (このIDを非表示/違反報告)
清雅。(プロフ) - 夏ノさん» ありがとうございます！最近忙しくて更新出来ない時もありますが、出来る限り頑張っていこうと思います!!! (2019年9月1日 22時) (レス) id: 54a20fa017 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：清雅。 | 作成日時：2019年8月10日 2時
