楽しそう ページ36
私の頬っぺたをつねっていたお父さんが、突然笑いだした。
さっきまでの真剣な表情はもうすっかりどこかへいってしまったようで、今まで何をしても離さなかった手をすっと離してくれた。
手が離れるとすぐに頬っぺたを押さえる。
じんじんとした痛みが頬っぺたを襲った。
『うう、いったあ。なんでいきなり……。』
「暇潰し」
『酷いや!!!』
じんじんとしている頬っぺたを押さえながら私はお父さんを睨む。
暇潰しで娘の頬っぺたを本気でつねる父親がどこにいるというのだろう。
目の前にいた。
お父さんは口を左手の鉤爪で覆い隠して、必死に笑いを堪えている。
私には何がおかしいのか全く分からず、頭の中にクエスチョンマークをただ浮かべていた。
「ク、クハッ……。中々良い表情だったぞ。」
『お、お父さんが無理やりさせたんじゃん！』
私がお父さんを責めると、お父さんはまた楽しそうに笑いだす。
今まで見たお父さんの中でも一番の笑顔だった。
『……あ、はは！』
それを見ると、なんだか怒るのもバカらしくなってしまい、私も釣られて笑いだした。
いつの間にか、頬っぺたの痛みも引いていた。
「……そういえば、服はどうした？ちゃんと着れたのか？」
お父さんがふと、思い出したかのように尋ねる。
『あ、えっと……。袖が邪魔で上手くボタンが留まらなくて。』
私の体をじっと見下ろしてみると、まだ第一ボタンしか留まっていない。
うわ、見下ろすと十分小さかった胸が更にぺったんこに見える……。
なんだか悲しくなってきた。
私も胸が欲しい。
……まあ、それは一旦置いておいて。
とりあえず私は頑張った。
床に着きそうな程の袖を必死に捲ってボタンを留めるという努力はちゃんとしていたんだ。
……でも、袖をまくるのが雑なのか、捲ったものが全て元に戻ってまた床に着くという永遠ループ。
静かにキレてました。
「まあ、そんな袖じゃあボタンを留めようにも留められないだろうな。」
………ほら、手ェ貸してみろ。
お父さんに優しくそう言われ、手をお父さんの方へ差し出す。
すると、お父さんはシャツの袖を丁寧に少しずつ丁寧に捲ってくれた。
不器用な私と違って、とてもキレイに捲ってくれている。
「これで大丈夫だろ。」
そう言われてはっとすると、袖がきちんと丁寧に捲り終わっていた。
『おお……！』
凄い。
お父さん見た目によらず器用!!!
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 250人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
清雅。(プロフ) - あめ。さん» ありがとうございます!!!お父さん感のある鰐さんを表現するのにかなり苦労したので、そう言ってくださるととても嬉しいです！これからも体に気をつけて更新していきます！ (2019年9月25日 23時) (
レス) id: 54a20fa017 (このIDを非表示/違反報告)
あめ。 - 意外と鰐さんがちゃんとお父さんしてて笑いましたw面白いですね！体に気をつけて頑張ってください！ (2019年9月23日 21時) (レス) id: 889e95be0e (このIDを非表示/違反報告)
清雅。(プロフ) - マリン さん» ありがとうございます!!!更新頑張ります(*^-^) (2019年9月7日 18時) (レス) id: 54a20fa017 (このIDを非表示/違反報告)
マリン - 初めまして！面白いです！更新頑張ってください！ (2019年9月7日 9時) (レス) id: 6f6628a406 (このIDを非表示/違反報告)
清雅。(プロフ) - 夏ノさん» ありがとうございます！最近忙しくて更新出来ない時もありますが、出来る限り頑張っていこうと思います!!! (2019年9月1日 22時) (レス) id: 54a20fa017 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：清雅。 | 作成日時：2019年8月10日 2時
