第八話 ページ8
昼休みが終わる頃、授業の準備をしようと教室へと戻った。デンジ君は3限目に受けた化学の小テストで赤点を取ってしまったようで先生に捕まってしまい、私だけが教室へ返されたのだ。
予鈴が鳴っても、教室内は先生が来るまで騒がしい。
次の授業なに？
やっべ、課題やってねぇ。
昼休みにコイツがさ…。
さっきネットニュースで流れてた悪魔が…。
自席に辿り着くまで、横切って行く生徒たちの会話が流れるように耳へと入ってくる。
次の時間は数学だ。
机の中から教科書を取り出そうと椅子を引いた瞬間、全身が凍りついた。
椅子に乗った一つの画鋲。
針はこちら側を向いて、真っ直ぐ立っている。
画鋲なんて、普段は先生が管理していて教卓の中に仕舞っている。それが一本、椅子の上にあるのだ。
私は一瞬で誰かがやった意図的な犯行だと理解した。
このクラスで孤立している私は、周りの人達から見れば発散するのに絶好なターゲットなのだ。
立ったまま硬直する中、本鈴のチャイムが響き渡る。
椅子を握る手に、汗が滲んでいるのが分かった。
仕掛け人からすれば、きっといい反応をしているのだろう。
「きりーつ」
気だるげな男子生徒の号令で、ハッと我に返る。
私の視線は一点の画鋲から、いつの間にか教卓に立っていた先生へと移された。
皆が席を立ち、椅子をガタガタと引く音に包まれる。それが止む頃、また同じ生徒が「礼」と言えば、皆が一斉に頭を下げ、上げ終わってから「お願いします」と声を揃えた。画鋲の一件で頭が真っ白な私だけが取り残される。ただ、頭を下げる生徒たちの背中を呆然と眺めていた。
「待て」と先生が被せる。
「誰だ、そこの女子」
先生は不機嫌そうに私を睨みつけた後、出席簿を確認し始め「A」と読み上げる。生徒たちの白い目は私に集まった。
「そう。お前だよ、お前。Aが礼してなかったのでもう一度。はいゴウレーイ。」
乾いた舌打ち。ダルっと漏らされた愚痴。ふざけんなよと投げられた言葉。嫌味のこもったため息。鋭い視線。
全てが無数の針になって、全身に突き刺されたような感覚だ。
いてもたってもいられなくなり「せ、先生」と情けないか細い声が出て、更に顔が熱でヒリついた。
「体調…悪いんです。あの、保健室行ってもいいですか？」
先生はまた怪訝な目でこちらを見ると、やけに響くため息を吐き「じゃあ行ってこいよ」と一言。
覚束無い足取りで、教室から出る。
「着席」を背中で聞いて、ドアを閉めた。
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不束者 - 続きが楽しみです！ (2023年1月13日 11時) (
レス) id: be5aa01d07 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん丸 - 最高ですにゃ、、、 (2022年12月16日 7時) (レス) @page28 id: 397365c42d (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - レイさん» ふっふっふ…( ΦωΦ ) お楽しみですね…ふっふっふっふ… (2022年11月29日 19時) (レス) @page27 id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
レイ - もしかして第2話のチェンソーマンって偽物か、、、、？と予想。あ、すんません急に、、、めっちゃ面白く読ませてもらってます。 (2022年11月29日 0時) (レス) id: 5efbcb8518 (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - 時雨さん» デンジ君は基本犬みたいにチョロくて可愛いイメージがあるので、私の解釈で土下座まで持ち込んでみました(´∇`) 夢主ちゃまとデンジ君の絡みはこれからドンドン親密にする予定です！お楽しみにしてください！🫶🏻 (2022年11月25日 19時) (レス) id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：のんのんた | 作成日時：2022年11月16日 0時
