第七話 ページ7
扉を開けた瞬間、風が全身を駆け抜けた。
陽の光が目にしみて、手を目元にかざして影を作る。
「ここで食おうぜ。教室じゃアレだろ」
そう言って、デンジ君は鉄格子の手前で腰を下ろした。
男女が机を並べて二人でいると、過度な噂が独り歩きをするものだ。屋上へ招いたのも、きっと彼なりの気遣いだったのだろう。
それにしても、だ。
「何で、私を誘ったの？」
率直な疑問だった。彼との接点は、たまたま席が隣になっただけの、ただのクラスメイト。それ以上でも以下でもない。そんな私を屋上に呼んで一緒にご飯を食べるなんて、どういう風の吹き回しなんだろうか。
「あー、なんつーか。せっかく隣の席になったんだし、仲良くなりてェじゃん？」
「…そうかな」
「少なくとも、俺はそうだね。あとコレ。今日いろいろ貸してくれたお礼。ノートの分と、シャーペンの分と、消しゴムの分。」
差し出されたサンドイッチとコーヒー牛乳と一粒の飴玉。
腰を下ろした私の前に、並んだ三つ。
拍子抜けした私を気に止めることなく、デンジ君は焼きそばパンの袋を開けると、一口かぶりついた。
お礼。お礼と言ったのか、この不良少年は。
正直、屋上へ呼び出されて、ひょっとしたら殴られるかもしれないと萎縮していた。購買の時はお前が突っ込んでけや、と頬に一発食らうかと腹を括っていた。
こんな恩返しをするような子だったとは、夢にも思わなかったのだ。
「ふふっ、ははは」
喉で押し殺したが、ついに盛大に笑った。
金髪で目つきの悪い、学ラン全開でチェンソーマンのTシャツを着る不良少年。
たったのルーズリーフのノート。たったのシャーペン。たったの消しゴム。貸しただけなのに。
不器用ながらも、こんな律儀に恩返しを貰えるなんて予想外すぎた。
「え、何。えっ、何だよ急に。」
「ごっごめん、ごめんね。ふっふふ、ありがとう。」
「待ってもしかして俺のゼンイを笑ってんの？」
デンジ君は呆れ顔で私を見る。
少しだけ、彼の頬が赤いのは気のせいだろうか。
なんだか少しだけ可愛く見えた。健気というか、何と言うか。
犬のような。
「ひっでー。誘ったのだってめっちゃ勇気いんだかんな」といじけながらもパンを口に運ぶ。
「じゃあこれは、デンジ君の奢りってことでいいの？」
私は手にサンドイッチを取った。
「おー、ありがたく食えよ。万年金欠の俺が買ったんだかんな」
「ふふっ、ありがとう。いただきます」
久しぶりの昼食だった。
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不束者 - 続きが楽しみです！ (2023年1月13日 11時) (
レス) id: be5aa01d07 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん丸 - 最高ですにゃ、、、 (2022年12月16日 7時) (レス) @page28 id: 397365c42d (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - レイさん» ふっふっふ…( ΦωΦ ) お楽しみですね…ふっふっふっふ… (2022年11月29日 19時) (レス) @page27 id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
レイ - もしかして第2話のチェンソーマンって偽物か、、、、？と予想。あ、すんません急に、、、めっちゃ面白く読ませてもらってます。 (2022年11月29日 0時) (レス) id: 5efbcb8518 (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - 時雨さん» デンジ君は基本犬みたいにチョロくて可愛いイメージがあるので、私の解釈で土下座まで持ち込んでみました(´∇`) 夢主ちゃまとデンジ君の絡みはこれからドンドン親密にする予定です！お楽しみにしてください！🫶🏻 (2022年11月25日 19時) (レス) id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：のんのんた | 作成日時：2022年11月16日 0時
