第十九話 ページ19
玄関横に並んでそびえ立つ自販機。
デンジ君は｢何がいい？｣と聞いてくるので、顔も上げずに｢何でもいい｣と答えた。泣き顔を見られたくなかったのだ。
そんな可愛げもなく悪態をつく私をもろともせず｢オッケー、何でもねェ｣と彼は財布を取り出す。
飲み物二本を購入したようだが、何を買ったのかは彼の背中で確認することは出来なかった。
開かれたままの玄関ドアから吹き込んでくる肌寒い風が、涙で濡れた頬を冷ややかに撫でる。
手中でずっと眠っていた画鋲は、体温ですっかり温かくなっている。
結局、教卓に戻すことも叶わず一階まで降りてきてしまった。
自販機の横に備え付けられていたゴミ箱を目掛け、分別も関係なしにそれを投げ入れた。
｢これでいい？｣と戻ってきた彼の両手には、ペットボトルのお茶が二本握られている。
差し出された容器を素直に受け取ると、手のひらにじんわりと熱が広がった。
｢何、今のチッコイやつ｣
デンジはキャップを開けると、お茶を一口含む。
｢画鋲｣
｢画鋲ォ？何で持ってんだそんなモン｣
｢えっと、椅子の上にあったから｣
ベコッと、乾いた音。
隣を見てみれば、彼の手元に握られていたペットボトルは、飲みかけのまま無惨に押し潰されている。エコ活動のため圧縮されたプラスチック容器の
強く握られた拍子で、お茶が大噴火を起こした
｢あああ！60円分が床の水分になっちまった…｣
デンジ君はしゃがみこみ、床に向かって｢美味いか？俺の60円分の茶だぞ。おい聞いてんのか、礼くらい言えや。｣と言って床を釘いるように見ている。
｢ふふっ、何それ｣
あまりにもシュールな光景に、思わず笑みが零れた。
彼はこちらの顔色を伺うように目を向けると、安堵したように笑った。きっとデンジ君は、すぐ顔に出るタイプだ。
｢ほら、見てみろよA。めっちゃ潤ってる。ここの部分だけ床年齢マイナス40歳。｣
｢ふっ、本当にやめて…ふふ｣
デンジ君は残りのお茶を飲み干すと、ゴミ箱へ投げ入れる。そして、意を決したように口を開いた。
｢俺も、コクベツシキってやつ行く｣
｢え？｣
突拍子もない発言に、思わず聞き返した。
｢Aは行くんだろ、明日。｣
｢そう…だね、さっき引き受けちゃったし｣
｢なら俺も行くわ。｣
…なんて、頼もしい人なのだろうか。
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不束者 - 続きが楽しみです！ (2023年1月13日 11時) (
レス) id: be5aa01d07 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん丸 - 最高ですにゃ、、、 (2022年12月16日 7時) (レス) @page28 id: 397365c42d (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - レイさん» ふっふっふ…( ΦωΦ ) お楽しみですね…ふっふっふっふ… (2022年11月29日 19時) (レス) @page27 id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
レイ - もしかして第2話のチェンソーマンって偽物か、、、、？と予想。あ、すんません急に、、、めっちゃ面白く読ませてもらってます。 (2022年11月29日 0時) (レス) id: 5efbcb8518 (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - 時雨さん» デンジ君は基本犬みたいにチョロくて可愛いイメージがあるので、私の解釈で土下座まで持ち込んでみました(´∇`) 夢主ちゃまとデンジ君の絡みはこれからドンドン親密にする予定です！お楽しみにしてください！🫶🏻 (2022年11月25日 19時) (レス) id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：のんのんた | 作成日時：2022年11月16日 0時
