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第十六話 ページ16

緊張感で張り詰めた室内は、デンジ君の恐喝を最後に再び静寂が訪れる。誰も名乗り出ず、ただ息を潜めるてばかりで時間だけか過ぎていった。
このことを企てた、主犯と、取り巻きと、ただ傍観していた者。この場にいる全員が敵なのだ。決して犯人を表沙汰に出さないこの静けさが、私に味方がいないことを物語っている。

唯一、私の肩を持ったのは、遅刻間際に登校し、実行に参加出来なかったデンジ君だけだ。
私を庇うように目の前に立つ背中は、頼もしくも見えるが。

…もし、彼が早く来ていれば、向こう側に立っていたのだろうか。


「おーい、お前らうるさいぞ。廊下まで丸聞こえだ。」


呆れ気味に入ってきた原先生の気の抜けた声で、何人かの生徒は(こわ)ばっていた肩の力を抜いたのがわかった。私もそのうちの一人だ。デンジ君が誰かを殴り飛ばす心配は打破できたのだ。


「ハイじゃあホームルームを始めます、日直」


先生が教卓に出席簿を置き号令を促すと、日直の号令を(さえぎ)ってデンジ君は「待ってください」と手を挙げた。


「コイツの机と椅子、見てくださいよ。どう見てもヤバくねェスか?」


先生は教卓に立ったまま身を乗り出す。首を揺らしつつ生徒の合間をぬって指された机を見れば、眉を下げてため息を一つ零した。生徒たちに呆れたと言うよりは、面倒事が起きたことへの倦怠感(けんたいかん)を孕んだ態度に、あっと思った。

この人もきっと、私の味方じゃないんだ。

先生は黒板に寄りかかって腕を組むと「お前らさぁ」と口を開く。


「お前らさぁ、もう高校生だろ。学校の机や椅子はお前らの両親が働いた金で買ってるんだ。それをダメにするのは、金と労力と時間を無駄にすんだよ。わかるだろ。第一、こういうのは俺が迷惑だ」


真っ当なことを言っているような印象を抱かせたいのか、先生はつらつらと言葉を並べる。視線は生徒達に向けられることなく、教卓を見下ろしていた。

いじめについて、一切言及しない。

ただ学校の備品をダメにするな、と内容を軽くまとめた説教が続くだけだった。
先生の口から出る見当違いな台詞と態度に、デンジ君は隣で小さく「いやいやいや…」と漏らす。


「あと、人をあまり揶揄(からか)うな。これから話す内容にも出てくるが、青原の件でお前らもムシャクシャしてるんだろう。」


からかう、とこんな行為を軽んじる発言と、青原さんのことで、この場を「しょうがない」と収めようという算段だ。

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設定タグ:チェンソーマン , デンジ , 二部   
作品ジャンル:アニメ
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不束者 - 続きが楽しみです! (2023年1月13日 11時) (レス) id: be5aa01d07 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん丸 - 最高ですにゃ、、、 (2022年12月16日 7時) (レス) @page28 id: 397365c42d (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - レイさん» ふっふっふ…( ΦωΦ ) お楽しみですね…ふっふっふっふ… (2022年11月29日 19時) (レス) @page27 id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
レイ - もしかして第2話のチェンソーマンって偽物か、、、、?と予想。あ、すんません急に、、、めっちゃ面白く読ませてもらってます。 (2022年11月29日 0時) (レス) id: 5efbcb8518 (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - 時雨さん» デンジ君は基本犬みたいにチョロくて可愛いイメージがあるので、私の解釈で土下座まで持ち込んでみました(´∇`) 夢主ちゃまとデンジ君の絡みはこれからドンドン親密にする予定です!お楽しみにしてください!🫶🏻 (2022年11月25日 19時) (レス) id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:のんのんた | 作成日時:2022年11月16日 0時

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