【男主】主 役 と 悪 役【wrwrd】

#17 リンゴ ページ17

ー貴方sideー

"sn｢A君は、もう俺らの仲間なんだから｣"


ゆっくりと体を起こす
あの言葉が、未だ脳裏に張り付いて離れない


『ばかみたい』


そう呟き、あの日のように俺は城を出た

月の光が優しく照らす
散歩がてら、A国に報告して……

木に登り、インカムを耳に当て、時間を待つ

兄貴は他の人に呼ばれて仕事
俺とは違い、頼りがいがあるから
時間のある俺が、仕事を代わる


『……あ、もしもし』

"｢なんだ、お前か。リンドウはどうした｣"

『仕事で……』

"｢まぁ、いい。で？報告は早めに終わらせろ｣"

『かしこまりました。幹部の動きですが_______________









_______________との事です』

"｢ふん……まぁ、いいだろう。また頼む｣

『はい』


インカムを切る

……ちょっと歩くか

木から降りて夜の街
明るいな……A国とは違って

みんな、何故か外に出ないから
子供のはしゃぐ声も、笑い声も
売人の声も話し声も

なんにもない


｢あら、新しい幹部様？｣

『……こんばんは』


びっくりした


｢こんばんは。いつもお疲れ様。これ、どうぞ｣

『え……』


一つのリンゴ
最近、食欲無かったからあんま食べなかったし
それに……人と話したこともあまり無かったから

……ちょっと警戒する


『大丈夫です』

｢あらそう？……でもおばちゃん、もらってくれたら嬉しいな｣


おばあさんは俺の冷たい手を握り、そのリンゴをくれた


『……ありがとうございます』

｢冷たいねぇ｣

『え？』


俺の手をさする手は、どこかぎこちない
それに、手をとる時もどこか探り探りだったし

……もしかして


『目が見えないんですか？』

｢……そうよ｣

『そうですか』

｢……でもねぇ｣


不意に手を伸ばして来たので、その手を握り
少し身を屈ませる……何を考えていたのだろうか

その手をゆっくりと


『……』


俺の頭に置いた


｢幸せだよ、おばちゃんは。優しい幹部様がこうやって、国を守ってくれて。安心してるんだよ。だから｣


……なんか既視感ある気がする

昔、まだ小さかった頃
こうやって優しく


｢私たちは大丈夫。幹部様もちょっとは国民を頼りなさい｣


頭、撫でてもらったっけ_______________


『……貴重なご意見ありがとうございます』

｢えぇ｣


俺はおばあさんを家に送り届けた後
もらったリンゴを、一口齧った
冷たいようで、どこか懐かしい

……そして


堪えきれない"何か"を、リンゴと共に奥に流して


『          』

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