【名探偵コナン】元零席の彼女とゼロの彼＿deux＿【食戟のソーマ】 (ページ32)

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八十一皿目ページ32

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「怒ってないですよ。」

『…！！』

ばっ、と俯かせていた顔を上げこちらを視界に映した。

そう、恐らくだが、Aは僕が怒っていると思って怯えていた。

前に人に水を掛けてはいけない。暴力を振るってはいけない。そう前に伝えたから。

人としてどれもしてはいけないことだが、彼女は少し倫理観に欠けているところがある。

それにさっきの彼女の行動を僕は遮った。
だから彼女は僕が怒っていると思って不安そうにしていたんだろう。

『A、いっしょに行っていいのっ？』

「ふふ、A以外に誘いませんよ。後30分もしないうちに梓さんが交代に来るので、それまでお代わりの紅茶を飲んで待っていてくれますか？」

『んっ！！』

ぱぁあ！！とさっきまでの顔が嘘のように瞳を
きらきらとさせ花が咲いたような満面の笑みを浮かべた。

今まで誘ったこと無かったからな。

可愛いな。その顔が見たかったんだ。

君に不機嫌そうな顔も、無表情な顔も、殺気立った顔
も似合わない。

陽だまりのような、こちらの心が暖かくなる、
そんな笑顔が君には一番似合うから。

もう一個ケーキいる？と聞けばこくこく、と元気良く頷いて返事をした。

沖矢昴が彼女に話しかけようとするたびに遮り、彼女がにこにこな笑顔になるような話題を振り続けて暫くすると、
交代の梓さんがやって来たので、帰る準備をするためにスタッフルームへ向かう。

彼女を少しでもあの場に残していくのは心残りだったが。

沖矢昴が赤井秀一という可能性がある以上、ヒロを
近くに寄らせるわけにはいかないからな。

後ろ髪を引かれつつも、急いで準備をする僕は、彼女たちのやり取りを知らなかった。

『ねぇ、ドイル君。』

「…なに？A姉ちゃん。」

『君がAの何を見て、何を探りたかったかなんて
どうでもいいけど、常識を知っておいた方がいいよ。』

「！！」

『Aね、約束を違えることが何より嫌いだけど、
人の気持ちも考えずにズカズカと無遠慮に入ってこようとする人間も大嫌いなの。』

＿＿まだ君が〝ドイル君〟と呼ばれていたいなら、連れの男共々良く考えるといい。

そう言い放った彼女の目が、氷のように冷え切り軽蔑の色を映していたことは、向けられた彼らにしか知りえない事だった。

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