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六十八皿目 ページ19

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スペシャリテ?なんだそれは。




「なんだ?そのスペシャリテ、って。」




ヒロが2人にその事を聞く。




「スペシャリテというのは必殺料理…つまりその料理人の顔とも呼べ、その人にしか作れない独創性のある一皿の事です。」



「へぇ、こん中にはそのスペシャリテ、ってのはねぇのか?」



「どの皿もとんでもない完成度ですが、先輩のスペシャリテならもっと趣向を凝らした一皿であるはずです。」



『ま〜今回作ったのはどれもフレンチの基本的なものばかりだから、本気じゃないもん』



「……!これで本気じゃないんすか?」



『いや手抜いたわけじゃないんだけどね〜?
流石にプロとして出すならもっと細やかな技巧とか使ったものじゃないと〜時間もあんま無かったしなぁ。』




手を抜いた訳でなくとも、彼女の本気ではなかったと言うことか…?


プロではない自分からしても、この料理たちがいかに凄いものかくらい分かるのに。



それで、Aのスペシャリテの話だっけ?と
彼女が再度口を開く。




『ん〜とね…なーんて言ったらいいのかなぁ…?』



「あ、いえ。秘密にしておきたい事なら答えていただかなくても構いませんので。」



『んぁ?違う違う。ただね、Aにスペシャリテの皿
はないんだよねぇ。』



「なっ…!?」




タクミくんの目が驚愕の色に染まる。



イサミくんや田所さんも。遠月で驚いていないのは幸平くんくらいだった。




『あれぇ?そんな驚くことかなぁ?』



「た、確かに学生でスペシャリテがあることの方が珍しいですが、優れた料理人なら誰でも持っていて、そして貴方はその料理人の中の頂点である方なんですよ!?
てっきりもうあるのかと…」



『ん〜これ、っていうのが無いんだよねぇ。』




そう言った彼女の目は、話し方はいつものAなのに、何処か薄昏い光を宿していた。



…なにか、あるのだろうか。




『まあA、そんなの無くても誰よりも料理上手
だも〜んっ。』



「んなこと言ってられるのも今だけっすからね。
すぐに俺が先輩のこと追い抜いてやる。」



『あは、頑張れ頑張れ〜とりあえず一年以内で第一席になるくらいじゃないと、その言葉は期待出来ないなぁ』




にしし、と悪戯っ子のように楽しげに笑う。



その後彼女は暫く幸平くんをからかい、それに対抗
して彼が負けじと言い返していた。



…ふん、仲の良いことだ。





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作者名:瑠璃 | 作成日時:2022年2月28日 21時

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