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六十五皿目 ページ16

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彼女に言われた料理名は横文字ばかりで松田が
らた、と…なんて…?と聞き返していた。




『まぁ、名前なんて何でもいいだろう。この料理たちは君たちの舌をもって判断してくれ。
どうぞ、Bon appétit?』




綺麗な発音のフランス語で召し上がれと言う彼女の言葉に、料理を口に運ぶ。



まずは目の前にあったキッシュロレーヌから。




「っっ……!?」




……っっ〜〜〜〜!!!?何だこれは!!?



一口食べると今の時期の季節野菜である蓮根や筍がシャキシャキと歯ごたえ良く口の中で音を鳴らす。
かと思えばやほうれん草やドライトマトが違う食感を楽しませてくれる。



噛めば噛むほど生クリームとチーズの滑らかな味が口いっぱいに広がった。




「……っえ?もう無い…?」




いつの間にか手に持っていたキャッシュロレーヌが無くなっていた。まさか本当に無意識で食べていたとは。



その後パテドカンパーニュや鮭のポワレ、ラタトゥイユを食べた。



正直、美味いとかの次元じゃない。



こんな料理が存在するなんて。彼女が僕に作った和食は不慣れだと言った意味がやっと分かった。彼女の得意とするフレンチはこんなにも圧倒的なのか。食べた時の満足感、幸福感。全てが桁違いだ。



彼女の料理全てが神の一皿になるんじゃないか。むしろ神そのものが作った料理とすら思った。




『さて、幸平。お前が遠月に編入して初めて実習で作ったブッフ・ブルギニョン。宿泊研修で田所とともに四宮と引き分けたテリーヌ。わざわざお前のために作ったんだ。
感想を聞かせてくれ。』




シェフの彼女は幸平くんの隣へ立った。



…距離が近いと思うんだが。






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作者名:瑠璃 | 作成日時:2022年2月28日 21時

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