第5話 ページ6
『まっ……待って！』
ピタリと、リーダーであろう男子高校生の足が止まる。
ゆっくりとこちらを振り向くと、不機嫌そうに鋭い目付きでこちらを睨んだ。
体がこわばり、無意識に手に力が入る。
『この子に……謝りなさいよ！』
男子「…は？」
地雷を踏んでしまったのだろうか。
いや、どう考えたって。
明らかに踏んだ。
ズカズカと私に近づき、片手で顎をグッと掴んだ。
力が強く、骨がミシッと嫌な音をたてる。
『う"っ……』
男子「女は黙ってろ………あれっ、お前…いい顔してんじゃん」
訳の分からない、もはやお前何様だ！と言いたげな態度と言葉遣いにイライラが募る私に対し、先程と打って変わって振る舞いが急変する男子生徒。
スッと私から手を離したかと思えば、次はまるで壊れやすい代物を扱うような手つきで私の頬へ手を添えた。
…冷や汗が止まらなかった。
私の顔をまじまじと観察するように舐めまわして見つめる相手に、鳥肌が立つ。
気持ち悪い…と。
思わず、ドンッと両手で突き飛ばしていた。
『っはあ…はあ………何すんの…！？』
男子「くふっ、お前の顔覚えたからね…」
舌でペロリと乾いた唇を舐め、私を何秒か見つめてから「行くぞ」と他の男子生徒を引き連れ、やっと図書館を出て行った。
正直自分でも何が起こったのか分からず、へにゃへにゃと全身の力が抜け、その場に座り込んだ。
頭が真っ白で、とにかく、もうヤバいってことだけが体が感知していて。
すっかり腰の抜けた私に近づいてきたのは、先程のグループに囲まれていた。
小柄な男子生徒だった。
？「………ねえ、アンタ」
『…だ、大丈夫だった……？』
最後の力を振り絞って笑う。
すっかり疲労しきった私は、傍(はた)から見れば男子生徒が私を庇っているようにしか見えないのだろう。
座り込んだ私に合わせるように、目の前にしゃがみ込む彼。
そこで初めて、彼の顔を目の当たりにした。
…………ん、この子の顔…どこかで……。
？「ふふっ。アンタの方がヤバそうなのに、他人の心配なんて、どうかしてる」
眉を下げて困ったように笑う彼。
そっと手を差し伸べられ、引っ張られる反動で一気に起き上がる。
そして、まだ子供らしさが抜けない…あどけない笑みで言った。
「和也。二宮和也……俺の名前」
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作者名：sayoro | 作成日時：2019年11月17日 18時
