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「手伝います。」
リクヲが、Aの服を畳んでいる彼女のお母さんにそう声をかけ、隣に座る。
Aがいつもお風呂上がりに来ていたTシャツを手に取ると、涙が溢れてきてしまった。
「りっくん…ずっとありがとうね。Aも、感謝していると思う。」
「感謝なんて…僕がしなきゃいけないんです。Aはっ、いっつも明るくて、僕達に何かあるとすぐ来てくれて、ずっとみんなを支えてくれていたんです。」
Tシャツを握る手に力が入る。
「A…初詣に行きたがっていたんです…。口には出してないけど、机の上のメモに書いてあって…」
「…そう…」
結局2人で泣いていて、午前中に終わるはずの作業は夕方近くまでかかってしまった。
Aのお母さんの車に、衣類の入ったダンボールを詰め込む。
「大きな家具は一週間後に夫に取りに行かせますので、その時はお願いしますね。」
「全部…ですか…?」
詰め込みを手伝っていたエイジは、思わず聞き返してしまった。
「…そのつもりだけど…」
一週間後にあの部屋にAがいた痕跡さえも無くなってしまう。そう思ったら怖くて、気づいたら頭を下げて、懇願していた。
「お願いします。何か一つだけでも、あの部屋に残して下さい。一つでいいんです。棚とか、テレビ台とか、ぬいぐるみでも、なんでもいいです。あの部屋から、Aがいた証拠がなくなるなんて、俺達耐えられないんです。」
しばらくして、お母さんの嗚咽で、エイジは顔を上げた。
「分かりました。」
微笑んで、お母さんは言う。
「全部置いていきます。Aも、ここの方が喜ぶと思う。」
エイジの目を真っ直ぐ見つめるお母さんの瞳は、Aのそれと全く同じだった。
「…っ…ありがとうございますっ…」
溢れてくる涙を隠すように、深く頭を下げた。
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消しカス(プロフ) - 譲さん» はじめまして!返事が遅くなってしまいすみません。読んで下さりありがとうございました!続編もいつか書きたいと思います! (2019年4月28日 22時) (レス) id: 74ee760c11 (このIDを非表示/違反報告)
消しカス(プロフ) - あゆさん» はじめまして!こちらこそ、読んで下さりありがとうございました!続編もいつか書きたいと思います! (2019年4月28日 22時) (レス) id: 74ee760c11 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ(プロフ) - お疲れ様でした!いつも通知を設定して待ってました!めちゃめちゃいい話で泣きそうになりました。本当にこの話を書いてくれてありがとうごさいます!良かったら続編も書いてくれないかなぁと期待してます笑 (2019年4月28日 18時) (レス) id: 536d9fa68d (このIDを非表示/違反報告)
譲 - 素敵なお話を書いてくれてありがとうございます!ラストがドラマみたいで凄くドキドキしました!本当にこんな世界があったらいいのにとすら思います!是非アバと赤ちゃん2人の続き的なものも読んでみたいです! (2019年4月24日 16時) (レス) id: 36992da896 (このIDを非表示/違反報告)
消しカス(プロフ) - たまねぎさん» はじめまして!読んで下さりありがとうございました!何度も読んでいただき、嬉しいです!コメントありがとうございました! (2019年4月23日 20時) (レス) id: 74ee760c11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:消しカス | 作成日時:2019年3月30日 21時