【今日から俺は！！】軍神かぐや (ページ8)

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Maria ページ8

雨が降っていた。

「くっそ…痛」

ケンカなんて久しぶりだ。

ガンくれてきやがったやつをシメるのも久しぶりだ。

“おい、またケンカしてきたのか”

ケンカするとあいつが不機嫌になるから。

久しぶりにやっちまった原因も

あいつだ。

雨が降る中、傘もさせずに
電柱の傍にしゃがみこんだっきり
動けねぇまま。

“ここはまだお預けだ、少年”

あんなこと言われちゃ、
あんな寂しそうな顔されちゃ、

「…調子狂う」

打ちつける雨音のせいで
その足音に気づけなかったらしい。

急に、俺の上に降る雨が止んだと思ったら

誰かが傘をさしかけてくれていた。

艶のある黒いヒール、
黒いスキニー、

顔を上げた先には

「風邪ひくぞ」

こいつはいつも

そうやって突然現れて

俺を掴んで離してくれない。

手に収まる桜柄の傘から
本当に桜の花びらが散ってきそうだ。

「立てるか？」

降りしきる雨の中

差し出されて握った手は

柔らかくてあったけぇ。

そのまま無言で手を引かれ
着いたのは

初めて出会ったときにも
連れて来られた喫茶店。

あのときと同じように

我が物顔でスタッフルームへ行き

「すまない、乾燥機とシャワー借りるぞ」

「んえ！？おいAちゃん！？」

マスターの男に断りを入れ

「ほら、短ラン脱ぎな。シャワーはここだ。
そのままじゃ風邪をひく」

俺の口元のケガには
とっくに気づいてるはずなのに

「マスター、服借りるぞ」

「なるほどー、そのボーイびしょ濡れなわけね。
そりゃ仕方ねぇ、使いな」

仏頂面のまま、
マスターに服を借り

「確か私の荷物の中に…
あ、すまないが救急箱も借りていいか？」

「おお、ちょっと待ってな。探して来るわ」

ケガのことについては
一切口出ししてこねぇ。

調子、狂う。