【今日から俺は！！】軍神かぐや (ページ30)

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Aside

「盗みに来てやったぜ、不二子ちゃん」

その男は
バージンロードを私めがけて真っすぐ歩いてきて
不敵に笑いながらそう言った。

ぴしっとキメた黒い髪、
きっちりタキシードを着こなした、

いつもと違う

相良の姿。

「…悪い子だな、少年」

この私の心を本気で盗むなんて
大した少年だ。

私も、負けてられないじゃないか。

「おいおっさん」と
今にも私の父に食ってかかりそうな相良を
片手で制し

呆気にとられている父と向き合う。

「お父様。お父様を困らせたいわけじゃありません。
ただ、私はもう、幼い頃の私でもないのです。

私は私の、たった一つの人生を歩みたい。

お父様が敷いてくれたレールの上ではなく、
私自身の道をゆきたいのです」

女が黙って待っている時代はもう終わりだ。
欲しいものは、自分自身の手で掴みに行く。

「たとえその道がいばらの道だとしても、
それが私の人生ならば、

受け入れることが幸せ」

そこまで言って
今度は夫になる予定だった彼に向き合う。

「本当に行くのかい？」

「はい。ご迷惑をおかけ＿＿＿」

「謝らなくていいよ。
君は最初から結婚に乗り気じゃなかった、
それを見て見ぬ振りした僕も悪いから」

さすがにちょっと心が痛むな。
だけど、私も後へは引けない。

引くわけにはいかない。

「でも、僕は君のことが好きだったよ」

「そうですか。
しかし申し訳ありません、私はそこまで…」

「そっかそっ…って、ええ！？
何回かデートもしたじゃん！？それでも！？」

「ええ。そもそも恋愛対象ですら…」

「えぇ…同じフィールドにすら立ててなかったの、僕…
もう全てを通り越して清々しいレベル…」

申し訳ないなと、ちょっぴり思いながら
今度は相良の腕をとる。

「これ以上の男には、
後にも先にも出会ったことがないもので」

「そっか、悔しいくらいにべた惚れなんだね。
幸せになりなよ、二人とも」

「はい、必ず。
あなたにも幸せが訪れることを心より祈っております」