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瞳に真っすぐな意志を宿らせて
Aは俺たちに話を続ける。
「私が私を必要としているし、
私は私を嫌いになりたくないから、こんな格好をしてるんだ。
たとえ相良や智司に嫌われたとしても、これだけは譲れない」
ほっそりとした身体に収まらねぇほどの、
揺るぎのない大きな信念。
俺が惚れた女は、
どうしてこんなに、
その辺の男よりもかっけぇんだ。
若干の敗北感すら感じるぞ。
「…俺がお前のこと嫌いになるわけねぇだろうが」
「相良、逆ギレすんじゃねぇ。
つまりその格好は武装みてぇなもんか」
「あんたたちが髪染めたりガッチガチにキメたりするのと一緒だよ」
短ラン、長ラン、銀髪、リーゼント。
黒いバイク、黒いライダース、黒いスキニー。
差し色の真っ赤なリップ、真っ赤なネイル。
「黒は、そんな偏見や差別に立ち向かうための戦いの色。
この色なら、男だろうが女だろうが自分自身を強く美しく魅せてくれる」
女だからという理由だけで
古い慣習や考えを押し付けてくる世の中へ、
反発し、反抗し、
声を上げるために。
黒ずくめの格好は
それらと真っ向勝負するための
こいつなりの武装。
「黒は、この世の不平等と戦う勇気をくれるんだ」
そう言ってAは、
にやりと誇らしげに笑った。
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作者名:櫻子 | 作成日時:2020年6月21日 23時