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Aが乾燥機にかけてくれていた制服に着替え


「また世話になってしまったな、すまない」

「まぁ、いいって。いつものことだしな」

「本当嵐みたいな人ですね、Aさんは」

「…伝説のスケスケ衣装で踊るか」


「…そっちの嵐じゃないですよ、何言ってるんです?」


軽口を叩き合いながら
マスターとウエイトレスに見送られ
二人で外に出る。



雨はまだ止まない。



「帰るぞ、送ってく」

「…普通逆だろ。送ってく、家どこだ?」




俺が送ると言うと
Aはまた不機嫌そうに眉を寄せた。



「傘も持ってないのにどうする気だ?

私を家まで送って、
その後はびしょ濡れで帰るつもりか?」



風邪ひいたら許さねぇ、とでも言いたげな顔。


「わかったよ」

「いい子だ」


大人しく従うかわりに、と傘を俺が持つと
Aは空いた方の手をそっと恋人つなぎにした。




冷たい雨の中でも
こいつの手だけは温かい。




このまま時間が止まっちまえばいい

このまま時間が止まってくれるなら
雨なんて止まなくて構わねぇ



そう思ったのは初めてだった。




けどそんな思いも虚しく
家が近づいてきたところで



空に吸い込まれるように
雨が止んだ。




「ここでいい」

「そうか?じゃあな、温かくして寝るんだぞ」


俺の手からAの温もりが
そっけなく離れてく。


「…A」


さっきまで繋いでいたこの手を、
まだ離したくない。


なんて、恥ずかしくて言えやしない。




やべぇ、





いま




ぜってぇ顔赤い。





傘を閉じたAは

短ランとシャツの隙間にすっと手を入れ
俺の腰を引き寄せた。


「どうした?」


上目遣いの
優しくて色っぽい表情が

すぐ目の前にある。




「…いや、何でもねぇ」

「そうか。じゃ、また会いに行くから。
それまでに口元の傷、治しておくんだぞ」



俺の腰をぐっと抱いたまま


ちょっと背伸びをして


耳元で言う。






「またな」

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設定タグ:今日から俺は , 相良猛 , 片桐智司   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:櫻子 | 作成日時:2020年6月21日 23時

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