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連れて来られたのは近くの喫茶店。
「匿ってくれ。少しの間だけでいい」
女はここの常連らしい。
俺の手を引き、早口でそう言いながら
我が物顔で奥へと入っていく。
「おい、思いっきりSTAFF ONLYって書いてあるじゃねぇか」
「大丈夫だ、これっぽっちのことで怒るやつらじゃない」
部屋の中は整理整頓されていて
窓がひとつと事務机、
二人掛け、一人掛けのソファが一脚ずつと
テーブルが置いてある。
「少年はそこに座ってな」
女は窓へ近づき外の様子を窺っている。
まじで、峰不二子にしか見えない。
「…いるか?」
「いや、大丈夫そうだ。命拾いしたな、少年」
「その少年って言うの何なんだよ。
俺にもちゃんとした名前があんだ」
「そういえば、まだ聞いてなかったか」
そう言うなり、女は咳ばらいを一つして
「君の名は?」
腹立つぐらいのキメ顔で聞いてきた。
「…は?」
「何だ?少年。映画観てないのか?
あんなにヒットしたのに?」
一見クールな女かと思いきや、
こういうことを涼しい顔でしてくるタイプらしい。
これはこれで厄介だ。
「まぁいい。で、少年。名前は?」
「…相良、猛」
「相良か。相良ね、覚えたぞ」
「お前は?まさか峰不二子じゃねぇよな?」
女は一瞬ぽかんとした後
その端正な顔を惜しげもなく崩して爆笑し始めた。
「峰不二子か、いいな。今度からそう名乗ろうか。
ねぇルパ〜ン♡…あははっ」
「…いつまで笑ってんだよ。
で、本名は?峰不二子じゃねぇんだろ?」
目に涙をにじませ、未だひーひー言いながら
女が名乗る。
「AAだ。Aでいいぞ」
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作者名:櫻子 | 作成日時:2020年6月21日 23時