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そのまま立っている俺に気がついたのか彼女は俺の方を見て首を傾げる。すると彼女は彼女の隣をペチペチと叩いて座りなよ、なんて笑って促している。
彼女のその厚意を断らずに彼女と少しだけ距離を置いて隣に座る。彼女はとても満足そうに微笑んでいて、正直調子が狂う。
空へと視線を動かした彼女の横顔をチラリと横目で盗み見る。その表情はワクワクと子供のように輝いていて、彼女が心から花火を楽しみにしているのがわかって少しだけ安心した。
「あ!ほら、はじまった!」
パッと空に指をさして彼女が言ったと思ったら、空からどおん、という重い音が聞こえて腹に響く。
空を見ると色とりどりの大輪の花が咲いては儚く消えていく。なるほど、これが『花火』というものらしい。
見たことがなかったそれに、今までに感じたことのない感情が湧いてくる。
「…きれ〜…」
小さくつぶやかれた彼女のその言葉が耳に入り、ちらりと彼女の方を見る。
「…!」
彼女の花火を見ている横顔に、思わず目を奪われる。
花火の淡い光と彼女の鮮やかな瞳の色のコントラストが美しくて、心臓が音を立てて口から出てしまうかと思ってしまった。
心臓の高鳴りを抑えようと彼女から視線を外す。花火を見ても心臓の高鳴りは消えなくて、はぁと浅い息が漏れた。
「…?加賀美?大丈夫?」
俺のその様子に気付いたのか、彼女は俺のことを覗き込んで俺を心配している。視界の端でサラリとポニーテールが揺れていた。
彼女に小さく大丈夫です、と答えると彼女は少しだけ頭にはてなを浮かべたが深く詮索はせずにそっか、と言って視線を花火へと戻した。
…正直、彼女が妙な詮索をしなかったことも、花火も終盤に差し掛かって周りが暗くなりつつあることにも、本当に助かったと思う。
(…鳴り止めよ、心臓。)
こんな情けない表情を見られて、どんな感じでいじられるか、なんて考えたくもないからだ。
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ちょこれーと(プロフ) - とりあえず新作がこんな早く見られると思ってなくて、嬉しいです!しかもkgmだって!?作者様のペースで頑張ってください!応援してます!! (5月8日 18時) (レス) id: 3d98585397 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:よる | 作成日時:2023年5月7日 23時