【３年A組】雨のち晴れ Ⅱ (ページ20)

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その後、ボクらは教室へと戻り、眠ることしかやることがなくなってしまった。
今はもうだいぶみんな夢の中。あんなことがあった後でも、やっぱり人間は生理的欲求には勝てないみたい。

はーくんの膝の上で寝るのは心地がいいけれど、今はそんなどうでもいいことしか考えられない。もっともっと考えるべきことがあるはずなのに、もうこの現実から目を背けたくて、思考が停止してしまっているみたい。

そんなとき、何故か死んだはずの里見君の声が聞こえてきて、勢いよく体を起こしてしまった。
ゴツンと額と額がぶつかり合って、寝ていたはーくんを起こしてしまった。

『わわ、ごめん。はーくん……』

「いや、いい。……何か怖い夢でも見たか？」

『いや、実は―――』

話そうと口を開いたけれど、何も言わずに口を閉じた。そんなボクをみて不思議そうに首を傾げたはーくんだが、遠くに何かを見つけたようで、目を細めた。

「お前、こんな時間に何やってるんだ？」

はーくんが声を潜めながらも掛けた相手は茅野と宇佐美だったみたいで、二人はびくりと体を震わせると、故障したロボットのようにゆっくりと顔をこちらに向けた。

「さくらが、中尾の声が聞こえたって」

「はあ？お前ら、見なかったのかよ……」

「いや、見たけど、聞こえたんだもん」

『ぼ、ボクも聞こえた。里見くんの声だけど』

「はあ？？何言ってんだ、寝ぼけてるんじゃ―」

『寝ぼけてないよ、寝てないもん！！』

「威張って言うことじゃないでしょ、アンタ。ほら、さくらもAも寝ないと明日に響くよ？」

ふあ～とあくびを溢し、再び眠りにつく宇佐美に、でもと食らいつこうとするもそれは甲斐によって遮られた。

「寝れないのか、」

『まあ』

「ほら、こっちこい」

自身の脚の間にボクを収めて、ぎゅっと抱きしめて抱き枕にするあたり、なんだかんだ言っ
て彼もちゃっかりしていると思う。

なぜか今日は子供体温のように温かすぎる甲斐の腕の中に閉じ込められたことによって、睡魔が急に襲い掛かってきた。

『おやすみ、はーくん』

「おやすみ、A……」

目を閉じればすぐにやってきた波に、抗うことなく眠りにつく。
だから、聞こえなかった……彼の悲痛な叫びは。

ｘ

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あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

新作です、よければ
【３年Ａ組】チェシャ猫は嗤う(http://uranai.nosv.org/u.php/novel/tyesyanyao/)