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「もう時間だ、教室へ戻れ」
そう声を掛けられるまで、
思うがままに無心で絵を描いていた。
水で薄めた青い絵の具を何重にも重ねて塗っていたせいか、暗雲が立ち込めたような絵になっていた。……まさに、今のボク等のようだ。早く外に出たくて、死にたくなくて、今まで仲間だと思っていた友達を疑い、センセイに売って自分は助かろうと必死な、この醜い心のように。
完成した絵を片そうと立ち上がると、絵はそのまま置いていけと言われたので、渋々、絵は片付けずに教室へと足を向けた。
教室へと戻るなり、まだ不機嫌そうな調子の悪そうな甲斐に招かれ、彼の隣へと腰を掛けた。
そして息つく暇もなく、センセイが入ってきた。
センセイは教卓にスマホを置き画面をタップをして言い放った。
「そろそろタイムリミットだぁ〜！……まずは、僅かな可能性にかけて...フェイク動画を撮った人っ！」
勢いよく手を挙げて、生徒に自首を促そうとするセンセイ。だが、やはり誰も手を挙げようとはしなかった。その様子を見るなり、悔しそうに脱力したセンセイはまた冷たい声を出した。
「それじゃあ仕方がない。刑事さんに当ててもらおうか。刑事さーん、わかりましたかー」
《嗚呼、直前まで迷ったけどなぁ》
迷った？？里見と真壁と花恋とあと、誰だ？
「ん〜。ちなみに誰と迷ったんですか」
《熊沢花恋と里見海斗だ》
「ええ〜、里見とはまた、意外ですねぇ」
《里見は、真壁からジャージを借りていた。彼を更衣室へと案内した大会関係者が見つかった。
里見がイケメンだから覚えていたそうだ》
理由...。
《問題は、どちらがこの動画を撮ったのか。その鍵を握るのは袖の汚れだ》
「袖の汚れ？……嗚呼、確かに。オレンジ色の汚れが付いていますね」
《おそらく何かが付着して洗ったんだろ。そこで二人に、その日何を食べたのか聞いてもらった。その結果、一人がトマトジュースを飲んでいた》
「トマトジュース……。確かにトマトジュースならオレンジ色のシミが付きそうですね。
……で？その生徒は、一体誰だったんですか」
《………熊沢花恋だ》
刑事さんのその言葉が聞こえるなり騒然となった教室。いっきに熊沢へと疑惑の目が確信の目に変わり、彼女を突き刺した。
思わず目を瞠った。
彼女が頑張っていたのはボクも知っている。だからこそ、こんなことをするとは到底思っていなかった。...いや、でも。この情報がフェイクなのだとしたら...？
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